成長した22歳の逸材を敵将も絶賛「日本代表に入るべき」 1万3121人沸かせた宇都宮の大型ガードが目指すジンクス打破
バスケットボールBリーグのチャンピオンシップ(CS)決勝第1戦が24日、横浜アリーナで行われ、宇都宮ブレックス(東地区1位)が琉球ゴールデンキングス(西地区1位)を破り、優勝に王手をかけた。宇都宮は22歳のPG小川敦也が3点シュート3本を含む15得点。1万3121人で埋まったスタンドを沸かせ、チームを81-68の快勝に導いた。

Bリーグのチャンピオンシップ決勝第1戦
バスケットボールBリーグのチャンピオンシップ(CS)決勝第1戦が24日、横浜アリーナで行われ、宇都宮ブレックス(東地区1位)が琉球ゴールデンキングス(西地区1位)を破り、優勝に王手をかけた。宇都宮は22歳のPG小川敦也が3点シュート3本を含む15得点。1万3121人で埋まったスタンドを沸かせ、チームを81-68の快勝に導いた。
「アグレッシブにプレーした結果。周りのアシストがあったから決めることができました」。初めて決勝の舞台を踏んだ22歳は、会見で初々しく話した。同席したベテラン比江島慎が「自信を持ってプレーしていた。チームに欠かせない選手です」と絶賛するほど、小川の活躍は際立っていた。
試合序盤、得意の3点シュートが決まらない宇都宮は、琉球に先行を許した。嫌な流れを断ち切ったのが第1Q途中でコートに立った小川。競り合いの場面から3点シュートを連続で2本決めて21-15とリードを広げてチームに勢いをもたらした。
第1Qを24-20で終えた宇都宮は、その後も3点シュートなどで着々と加点。前半を41-35で折り返すと、第3Qには小川が自慢のスピードを生かしたドライブからレイアップシュート。攻撃に勢いをもたらし、スタンドのムードを変え、この日の主役になった。
筑波大2年の22年に特別指定選手として宇都宮入りし、昨年1月にプロ契約。世代別日本代表に選ばれて将来も嘱望されるが、選手層の厚い強豪チームでレギュラーシーズン(RS)では決して出番は多くなかった。それでも、昨年12月以降は出場時間も増え、千葉ジェッツとのCS準決勝では富樫勇樹と渡り合って決勝進出に貢献した。
思い切りのいい3点シュートが、相手を苦しめた。「今日は小川くんにやられた。ノーシューターと言われた選手に、あれだけポンポンと決められては…」と琉球の桶谷大監督。前半3本の3点シュートが、勝利のカギだった。
外から打たないか、打っても決定率の高くない選手を指す「ノーシューター」。琉球は準決勝でも威力を見せた小川のインサイドへのスピードは警戒しながらも、外からのシュートは「打たせてもいい」という姿勢。厳しいマークにいけずに3点弾を許した。
無理もない。RSの小川は、1試合あたりの平均0.4本しか3点シュートを決めていない。CSに入ってからも5試合で9本打って成功は2本。正確にスカウティングしたからこそ、他は警戒しても「ノーシューター」の外からのシュートは「打たせていい」となる。
後半、琉球が外からのシュートに圧力をかけてくると、小川は中へ切れ込んでプレー。自在の動きで相手の守備を翻弄した。桶谷監督からも「こちらの問題もあるが、シュートを決めた小川くんが素晴らしい。日本代表に入るべき選手」と絶賛された。
「空いたら打とうと決めていた」と小川は言った。トップ選手に囲まれて遠慮もあったのか、消極的なプレーが目立つ時もあった。2月に他界したケビンHCからは「シュートが打てる時には打て」と繰り返し言われた。チームのレジェンド田臥勇太からも常に「積極的にプレーすればいい」とアドバイスされた。この日は大舞台にも関わらず、臆することなく積極プレー。成長の跡を示すように「明日もミスを恐れず思い切りプレーしたい」と話した。
今季RS勝率8割だった宇都宮は「最高勝率のチームはCSで勝てない」というジンクスに挑む。過去7回のCSのうち勝率1位チームは5回決勝に進んでいるが、いずれも準優勝。当初の一発勝負が21-22年から2戦先勝方式になったが、第1戦をとったのも今回の宇都宮が初だ。
ピークの時期を過ぎるからか、相手に研究し尽くされるからか、中立地開催でホームアドバンテージがなくなるからか…。必要なのはRSに見せなかった新たな武器とチームの勢い。優勝には未知の要素「Xファクター」が不可欠だ。CSの流れを変える「ラッキーボーイ」小川が、ジンクス打破のカギを握る。
父忠晴さんは、日本リーグ時代の強豪いすゞ自動車でリーグ優勝5回、日本代表にも選ばれた名選手で引退後も指導者として活躍している。そんな父が何度も経験している「日本一」に王手をかけ、日本代表入りも視野に入れる小川は「相手も強いので、第2戦が大事。空いたら打つ。明日も狙い続けたい」と力強く言った。(荻島弘一)
(THE ANSWER編集部)