B1東地区4位から下剋上 外国籍“3番手”の成長を導いた、宇都宮に根づく「勝者の文化」
フィーラーの強みを引き出した宇都宮のチーム力
チーム内の序列はジョシュ・スコット、アイザック・フォトゥに次ぐ“外国籍の3番手”だし、出場時間も20分前後に限られる。しかし与えられた時間の中でしっかり強みを出し、欠かせない存在になっていた。オフェンスでは外角のシュートを高確率で沈め、時には自陣からのボール運びを任され、ウイングの位置では起点になるパス能力も発揮。守備では長い腕を生かしたリバウンド争い、スティールを見せつつ、センターからウイングまでどんな相手にも脚力を生かして粘り強く付いていた。
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外国籍選手は日本人選手に比べるとすぐに結果を求められがちで、シーズン中に人を入れ替えるチームも多い。しかし安齋HCは辛抱強くフィーラーの強みを探し、チームにフィットさせていた。
渡邉裕規はこう口にする。
「何年もかけて作って、万全を期して優勝を目指したものが(移籍で)なくなって、チェイス(・フィーラー)とアイザック(・フォトゥ)が入った。彼らも大変だったと思いますけど、初めての日本で、でもその中でもこういう結果を残して、ああいう戦う姿勢を見せている。日本のチームに対するリスペクトと柔軟性が彼らにはある」
安齋HCは“ライアン・ロシターが抜けた穴”と、そのカバーについて問われて、こう答えていた。
「ライアンが素晴らしい選手なのは間違いないですし、僕もずっと一緒にやっていて助けられました。今シーズン入ってきたチェイスとアイザックも素晴らしい選手で、あと周りの選手のサポートがすごく大きい。ベンチでもナベ(渡邉裕規)とか(田臥)勇太も声をかけてくれている。そういうチームだから、あの2人も早く一員になろうとして、どうなれるかを考えてやってくれた」
確かに準決勝を見れば、彼らは間違いなく“素晴らしい選手”だったが、それを引き出したのは宇都宮のチーム力だ。
渡邉裕規、田臥勇太の両ベテランはベンチに座る時間こそ長いが、仲間にアドバイスを送り、時には声を張り上げてチームにエネルギーを送っている。さらに言えばアウェーにも大挙して駆けつける“ブレックスネーション”の後押しもある。このCSではフィーラー以外にもテーブス海、荒谷裕秀ら若手が活躍を見せたが、宇都宮には人の力を引き出す文化がある。選手が入れ替わっても、チームカルチャーは残っていた。