「球児の身体の守り方」 プロ野球トレーナーが説く、アスレチックリハが大切な理由
実戦的な動作の前段階が「アスレチックリハ」 具体的にはどうする?
それでは「アスレチックリハ」とはどのようなことを行っているのかを紹介していきましょう。
具体的な例をあげると“ハムストリング(足の太もも裏)の肉離れ”の場合、受傷直後はアイシング、安静がセオリーです。傷病の程度にもよるが、軽度の場合はその後ある程度の腫れや痛みが治まってきたら、可動域を回復させたり、徒手やチューブなどを使った筋エクササイズを開始します。
そして、歩行→ジョグ→ランニングと進み、実戦的な動作にステージをあげて実戦復帰となる(軽度の場合はテーピングをして試合に出場しながらステージを進めていく)のが流れです。そして現在は、受傷部位へのアプローチも大きく進歩してきています。そこで今回はその後のアスティックリハについて取り上げます。
受傷部位の筋収縮機能などが回復したら、ランニングや実戦的な動きに即した練習を開始します。
この時に並行して行っていくのが「運動連鎖もしくは運動機能の連動」の獲得です。ハムストリングの怪我が回復しても、この運動連鎖や機能が崩れていると、再発のリスクが高くなります。
言い換えると、「正しい体の使い方を再教育する」ことがテーマです。
このケースでよくあるのが、走る動作の中で“ハムストリング”が最初に筋収縮を始めてしまうケースです。これが意味することは、ランニングによって受傷部位である”ハムストリング”への負担が大きい状態が続いており改善されていないことです。
通常は(体幹→臀部→ハムストリング)という順番で筋収縮が起こります。つまり、臀部の筋肉がうまく機能していないので一見は回復したように見えますが、再発のリスクが高いまま復帰させていることになります。もちろんその他の再発リスク要素はありますが、このことが改善されるべき大きな要素であることは間違いありません。