「球児の身体の守り方」 プロ野球トレーナーが説く、アスレチックリハが大切な理由
野球人口の減少による球児への負担増大。球数制限の議論などが活発に行われるようになってきた今だからこそ、野球界は改めて選手の体と真剣に向き合う必要がある。
連載「球児の未来の身体を考える」第1回
野球人口の減少による球児への負担増大。球数制限の議論などが活発に行われるようになってきた今だからこそ、野球界は改めて選手の体と真剣に向き合う必要がある。
セ・リーグで3連覇を成し遂げた広島東洋カープの石井雅也ヘッドトレーナーとともに、球児の体と真剣に向き合う「THE ANSWER」の連載「球児の未来の身体を考える」。第1回は同トレーナーが最も大切と強調する「アスレチックリハビリテーション」について。現場の最前線で選手の体を見続けてきたスペシャリストが説く考え方と実践方法とは――。
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「アスレチックリハビリテーション」という言葉が、近年スポーツ界ではよく使われるようになってきました。以前より、「リハビリテーション」という言葉は身近に使われてきましたが、ここでいう「アスレチックリハビリテーション(以降アスレチックリハ)」はその意味合いが少し違います。
「リハビリテーション」が日常生活までの運動機能等の回復を目的としたもので、「アスレチックリハ」が意味するのは競技復帰までの競技特性の技術など含む運動機能等の回復獲得を目的としています。
スポーツ選手達にとって怪我やスランプはつきものです。
日本国内のスポーツ界においては、2000年ぐらいまで「アスレチックリハ」という考え方は一般的ではなかったように思われます。通常、怪我をした後はリハビリテーションから競技復帰へと進められていました。
そのため、競技に必要な運動機能や技術的動作を含む機能回復は、実戦もしくはそれに近い練習の中で獲得していく流れになっていました。それが当時としては普通の考え方です。
こうした状況の中で、自分たちは2000年にピッツバーグにあるUPMC(ピッツバーグ大学医療センター)やアリゾナ州にあるアスリートパフォーマンス(現:EXOS)などで、このアスレチックリハビリテーションやエクササイズを学び、チームにフィットするようにアレンジを加えて現在に至っています。もちろん、現在も多くの施設のノウハウを学びながら日々取り組んでいますが、その進化のスピードの速さには毎年驚かされています。
試合や練習の中では当然怪我は発生しますが、このような取り組みにより怪我のリスクがデータとしても大きく改善されてきています。近年「アスレチックリハ」がスポーツ選手の傷害予防やパフォーマンス向上に大きな要因であることが理解され、プロスポーツ界ではもちろん一般的にも幅広く認識されるようになってきました。