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アスリートが地球のためにできる食事の工夫 スポーツ栄養の世界も「これまでを見直す時期に」

地球温暖化は待ったなし「スポーツ栄養の世界もこれまでの食事を見直す時期に」

 2つ目は、地域の食材、旬の食材を取り入れること。

 地域の旬の食材を食べることで、まず、食料を運搬する際に排出される二酸化炭素の量を抑えることができます。また、新鮮な旬の食材は美味しく、栄養価も高いため、多くの栄養素を必要とするアスリートに最適。さらに、地産地消は生産者を守り、地域を活性化させ、食料安全保障にもつながります。

 これらを可能な範囲で取り入れることは、結果的に温室効果ガスの排出を抑え、環境負荷を抑えることにつながります。

 3つ目は、できることから始める。
 
 オリンピアンの中には、動物性食品を減らしたい人のために非営利団体を立ち上げ、自らの経験を元にアスリートがコンディションを崩さず、食生活を改善していくためのサポートを行っている人達もいます。身近にできることに加え、このようなネットワークを活用するなど、それぞれができることから始めることが大切です。

 さて、アメリカでは運動強度別にバランスのとれたアスリートの食事を示す「アスリートプレート」というツールが栄養指導の現場で使われていますが、現在、その共同考案者である、アメリカ・コロラド大学のNanna Meyer博士とアメリカオリンピック・パラリンピック委員会では、プレートの内容の見直し図っています。

 というのも、現在の「アスリートプレート」は、食品の生産・流通が及ぼす環境問題を考慮されていないからです。特に、欧米では肉を中心とした食事が主流。食肉の生産における環境負荷は広く知られていますが、運動量の多いアスリートは動物性食品を摂り過ぎる傾向があるため、これからの時代に合わせたアスリートの食事を検証することになりました。

 待ったなしで地球温暖化が進むなか、スポーツ栄養の世界もこれまでの食事を見直す時期に突入しています。

 肉料理が食事の中心となる欧米のアスリートと異なり、米を中心に少量ずついろいろな食品を食べる日本人アスリートがどの程度、肉(主に牛・羊・豚などの赤肉)を減らす必要があるのか、明確な答えはありません。それでも、よりよい環境でスポーツを続けられるよう、アスリートの個々の事情や異なる国の食文化のなかで、自分たちのできるアクションを起こすことが必要です。

 そして、アスリートに限らず、彼らを支え、スポーツを楽しむ一人ひとりが、地産地消、旬の食材やオーガニックのものを選ぶ、家庭での食品ロスを減らすなど、サステナブルにつながる行動を起こすことが大切だと思います。

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。アメリカ栄養士会スポーツ循環器栄養グループ(SCAN)並びに、スポーツ栄養の国際的組織PINESのメンバー。アメリカ栄養士会インターナショナルメンバー日本代表(IAAND)として、海外の栄養士との交流も多い。近著に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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