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「生理が止まったら練習できている証拠と…」 未だ「ピル=避妊」と理解進まぬ日本にメダリストの警鐘――マラソン・有森裕子

女性アスリートと体の問題に警鐘「日本では『ピル=避妊』なんです」

 そうしたUNIVASでの発信の1つが、生理など女性アスリートの体の問題だ。自身の現役時代と比較して、部活動などスポーツの現場の理解は進んでいるのだろうか。

「理解の速度が遅いですね。実際、いまだに現場で無関心、無頓着な人が多いですし、生理が止まったら、それだけハードトレーニングができている証拠だというバカげた考えも残っています。理解が進まないのは、圧倒的に男性指導者の数が多いのが原因の1つかなと思っています。これは男性が悪いということではなく、女性の体のことを理解できている女性を、指導現場にもっと置くべきなんです」

 10代、20代の女性アスリートが、生理などについて男性指導者に相談しにくいという側面は間違いなくあるだろう。

 そもそも日本は、生理などの理解が海外よりも遅れている。例えば生理中の経血止めにしても、海外の選手は「ミレーナ」という薬を使用して対応しているが、日本でこの薬の存在を知っているアスリートはまだそれほど多くない。薬の種類や知識の理解を進めていかなければいけないが、日本ではピルを含めて使用に対する抵抗感がまだ大きい。

「海外ではピルは生理を遅らせるなど、自分の体や試合のことを考えて使用しているのですが、日本では『ピル=避妊』なんです。ピルというものに対して、めちゃくちゃバイアスがかかっているんですよ。私自身、更年期の症状が出て、しんどかったのですが、クリニックに行ってホルモン補充の処方をしてもらったらすぐに解消したんです。自分の無知の怖さを知りましたし、これが日本の現状だと思うんです。ピルを含めて、何をどう使うのか、私たちがもっと発信していくことが重要だと思います」

 五輪メダリストである有森は、社会貢献活動の一環としてゲストランナーとしての仕事をこなしている。多くの市民ランナーがマラソンに挑戦する姿を見て、毎回思うことがあるという。

「マラソンを走る市民ランナーって、凄いなと思いますね。平日に仕事をしているなかで、時間を見つけて練習し、土日にレースに出て、翌日に普通に仕事をするんです。変な言い方ですけど、ほんと尊敬しますよ(笑)」

 市民ランナーのマラソンに懸ける時間や労力、お金はプロとは差があるにせよ、その情熱はプロにも劣らないものがある。彼らの本気をレースで感じられるという。

 地方にゲストランナーとして行くと、「走らないんですか」「また走ってください」と声をかけられることが多い。だが有森には、走ることについて確固たる信念がある。

「マラソンは、そこに意味や目的があったり、仕事であれば走ります。一生懸命に必死に頑張ることは好きなので。でも自分から、なんとなく走るのが楽しいからやる、というのはないです。もともとマラソンは仕事。仕事は結果を出さなければいけないものですし、生きるため、食べることに繋がるものを得るためにやっていたんです。楽しむためだったら絵を描いたり、モノを作ったり、自分の好きなことをやっていたいんですよ(笑)」

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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