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強豪校へ進学すれば幸せ? 堀越高サッカー部監督の疑問、選手主体で活動する部活の意義

信じ難い指導者のパワハラや暴言が飛び出す強豪校の実態

 佐藤監督は堀越高校からサッカーで結果を出すために雇われた指導者である。本来なら旧来の強豪校と同じ手法へ突っ走っても不思議はなかった。

 しかし選手たちを主人公に考えた時に、結果以上に大切なものがあるのではないかと疑問を覚える。全国高校サッカー選手権で優勝できるのは1校しかないし、東京都の代表になれるのも2校に過ぎない。「宝くじ」を逃せば何も残らない部活にはしたくなかった。高校時代は大人への入り口へと歩みを進める大切な時間だし、夢を育める最後のタイミングかもしれない。1%もプロになれない現実を見ても、部活を通して社会に出て活躍できる人財の育成を優先するのは理に適っていた。

 ボトムアップ方式の先駆者である畑氏も辿った道だが、選手たちに主人公の座を渡すと、彼らは責任を自覚して歩み出す。指導者に怒鳴られる恐怖という外発的な動機づけではなく、湧き上がる向上心という内発的な動機づけで積極的に活動を始める。

 短絡的な前者に対し、後者には我慢が要る。しかし遠回りに見えて、選手自身から芽生えた「やる気」は決して折れない。それに自ら定めた目標に向けて懸命に歩む部活は心底愉しいはずで、書籍のタイトルにもなった「毎日の部活が高校生活一番」だったという2020年度の卒業生・馬場跳高くんの言葉にも表れている。

 過去に本サイトでも紹介したが、中学生のために進路情報を提供するWEBサイト「FOOT LUCK」を運営する中村圭吾さんは、「おそらく高校生活を振り返り幸せじゃなかったと感じている人が85%くらい」と語っていた。85%の精度はともかく、要するに「サッカーが上手くなりたい」「サッカーで勝ちたい」と強豪校を選んだ大多数の選手たちが、「こんなはずじゃなかった」という結末を迎えているのだと思う。

 欧州と日本の選手たちの相違は「自分がプレーできる」チームを選ぶか、「強豪校の一員になる」ことを優先するか、だった。だが最近ではSNSの発達等もあり、強豪校の実態が少しずつ明らかになりつつある。もちろん、弱小校ではあまりニュースバリューがないせいもあるが、一般常識では到底信じ難い指導者のパワハラや暴言が飛び出すのは、決まって「強豪」と括られる学校だ。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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