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2度の戦力外通告で転身 元日本ハム外野手が「野球より好きになった」仕事で生きる今

大きかった元ロッテ同級生の存在「もう野球選手に見えないなと…」

「あまり生き方って考えたことなかったな、と思ったんです」と鵜久森さん。当時31歳。残りの人生をどう生きたいか、初めて思考を巡らせた。自問自答した末に浮かんだのは、自分が応援されてきた人生だったということ。プロ野球はもちろん、アマ時代も指導者、家族、地域の人たち……。今度は自分がたくさんの人を支える側になり、共に歩んでいくことが“生きたい人生”だと思った。

「人はいつか必ず亡くなる」。その最期の瞬間を迎えた時、「鵜久森にいてもらってよかった」と思ってもらえる人が1人でも多くいてほしい。そう考えると、保険業界に魅力を感じた。「この仕事は個人個人との繋がりが大きいですし、それが叶えられるのではないかと考えました」

 もう1人、大きな影響を与えたのが、元ロッテの青松慶侑さんだ。捕手、内野手としてプレーした同い年、会えば野球談議に花を咲かせた間柄だった。2年早く引退し、ライフプランナーを経て、現在は柏支社の営業所長を務める。鵜久森さんは現役時代から、その姿に衝撃を受けていた。

「2年間で、何がそんなに変わるのかと刺激をもらいました。昔は野球の話しかしませんでしたが、いい意味で『もう野球選手に見えないな』と思ったんです。彼が引退した後にバッティングの相談をしたこともありましたが、分かりやすい的確な言葉で伝えてくれると言いますか。知識もそうですが、大きく変わったと思ったのは雰囲気、オーラみたいなもの。『今の方が輝いているんじゃないかな』と感じました」

 引退後、すぐに野球界に恩返ししたい気持ちもあった。大学を卒業していないこと、全く違うステージに進むことに不安もなくはなかった。14年間を過ごしたプロ野球界のことなら、大体のことは分かる。裏方として球界に残る道は、安心できる選択肢でもあった。

 でも、落合さんや青松さんのように、野球界の外で輝く人の姿が「自分もそういう風になれるのかな」とワクワクする気持ちを醸成していった。「野球で言えば、人生の仕切り直しでまだ3回くらい。9回まであるとしたら、まだまだ序盤なので、やり直せると思いました」。一から違う道で勉強し、成長することで“生きたい人生”を目指すと決意。10社近くから接触があったが、最後はソニー生命保険に入社を決めた。

 ライフプランナーとして勤務を始めて今年で3年目。「少しずつ形ができ始めているところ」と言うが、当然苦労も経験した。入社直後、営業に同行した上司がスムーズに商談する姿を見て「こんな風になれるのか」と不安になり、会話は聞き慣れないワードだらけで知識不足を突き付けられた。

 最も痛感したのは「言語化能力」の必要性だった。ヒーローインタビューは聞かれた質問に自分の感情を表現するだけで良かったが、ライフプランナーは相手の話をしっかりと聞き、自分の考えを的確に伝えることが重要。言いたいことを分かりやすく表現しなければ、顧客にも信頼されない。「最初は本当に酷かった」と苦笑いするスタートだったが、プラス思考は忘れなかった。

 野球だって、最初から上手かったわけではない。努力すれば、仕事もこなせるようになるはず。3月に初めての契約を結ぶなど少しずつ成功体験を重ね、不安は小さくなっていった。業務をこなすうち、仕事に臨む考え方や準備の大切さは野球と大きく変わらないことに気付いた。

「野球で対戦する投手も2人として同じ選手はいないですし、分析して打席に立つじゃないですか。今の仕事も1人1人のお客様に情報提供するにあたって、しっかり分析を心がけますし。やっぱり準備の大切さは変わらないなと」

 1打席に臨むまでの入念なアプローチの必要性は、仕事も変わらない。少し違うと感じているのは、責任の感じ方だ。打者は、打率3割で一流と言われる。逆に言えば7割は凡退、つまり失敗する世界だ。次の打席で迷いが生まれないよう、結果が出なくても「まあいいや」と割り切る必要もあった。一方、金融商品を扱う仕事は、顧客のためにも失敗は許されない。だからこそ、評価してもらえた時には一層の喜びを感じるという。

「プロ野球では1軍の枠に入ることを前提に、自分が使われるためにはどうすべきかと考えていました。でも、今は(一緒に働く)みんなが1軍の戦力という感じ。評価してもらうのは上司ではないですよね。お客様に『担当は鵜久森さんでお願いします』と言ってもらえるのが凄く嬉しいです」

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