体育会出身者は本当に就活に有利なのか “経営者”ラグビー廣瀬俊朗が求める人材
廣瀬さんが評価する人材とは? 「自分で考えて動けるかどうか」
前段階として体育会出身者が持つイメージは、おぼろげな先入観になりこそすれ、今や無条件にアドバンテージになる時代ではない。それ以上に求められるものがある。東芝退社後の2019年に株式会社「HiRAKU」を立ち上げた。経営者としての視点から、採用したい人物像は明確だ。
「(自分の理念、信念に)共感してもらえるかというのが、前提としてまず1つあります。そして成長して常に学んでいけるような人間で、かつそれにアクションが伴うこと。実践できる力を持っているかどうかは見たいですね。
普段の生活を共にしていく中でわかってくるものもある。例えば1日ゴルフを一緒にすれば、人となりが見えてきますよね。プレッシャーがかかる局面で、普段は出てこない一面が見えたりします」
追い込まれた時にこそ、その人の真価が見えてくる。さらに言うと逆境に置かれた経験が人を成長させるのかもしれない。廣瀬さん自身も立場が変わり、人に求めるものも変わっていった。
「相手がこうなってくれるだろう、といった点に関しては現役の時のほうが強かった気がする」と明かす。キャプテンとしてチームを引っ張った選手時代はその人の現実を見据えずに、楽観的に期待していたが、その責任は取らなくても済んだ。
「コーチや経営者になってくると、願望だけじゃない。現役の時のように『やってくれるに違いない、やってくれるだろう』という考えで接することはできません。(周りに)期待をし過ぎて結果が出なかったら、結局は自分の責任です。見通しが甘かったということ。そう思うようになりました」
そんな中でも廣瀬さん自身、学生時代から今に通じて一貫してブレない信念というものもある。そしてそれが学生に対して、求めるものでもある。
「ずっと大事にしていた考え方は『自分で考えて動くこと』。大学時代もそうですし、選手としても大事にしていました。そこは大前提としてありました。誰かがこう言ったから、じゃあそうしようと。それで成功したとしても楽しくないと思います。自分で考えて行動した時に、成功するとより面白い。“面白さ”の価値観というものがそこにあった。小さい頃からそうやって自分で考えてやっていくのが好きでした。
ただ難しいことではなくて、ただ言われたことをやることだって、最終的には自分で考えて決断している。その前提に立つということ。これから何が正解かわからない時代の中で、自分で考えてワクワクしながらやっていくのが楽しいことなんじゃないか。結局、社会から求められるのはそういった価値観なのかもしれない。最初から大きなことはできないが、小さいことからでも、自分からでもアクション出来るといいかなと思っています」
自分で考えて動く――。簡単ではないように聞こえるが、誰もが日常的にやっていることだと廣瀬さんは説く。体育会かそうでないかよりも、自らの意思で道を切り開ける人こそ強いと感じている。
■廣瀬俊朗/THE ANSWERスペシャリスト
1981年生まれ。元ラグビー日本代表キャプテン、日本代表キャップ数28。現役引退後、「ビジネス・ブレークスルー大学大学院」にて経営管理修士(MBA)を取得。ラグビーW杯2019では公式アンバサダーとして活動。試合解説をはじめ、国歌を歌い各国の選手・ファンをおもてなしする「Scrum Unison」や、TBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」への出演など、幅広い活動で大会を盛り上げた。現在は、株式会社HiRAKU代表取締役として、ラグビーに限定せずスポーツの普及、教育、食、健康に重点をおいた様々なプロジェクトに取り組んでいる。2020年10月より日本テレビ系ニュース番組「news zero」に木曜パートナーとして出演中。
(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)