「出るだけで800万円」 南極もアフリカも…世界7大陸を飛んで毎日42.195kmの異次元マラソン、5日間19時間7分で世界記録

7大陸マラソンで一番キツかったのはフォルタレザ その理由とは
南極の温度はマイナス15度、南アフリカは25度、コースは10キロを4周するが、ほとんど日向だった。それでも3時間25分で走り切り、すぐにパースに向かった。機内では、機内食を食べ、ゴムバンドで足を圧迫したり、マッサージガンを使用したり、セルフケアとリカバリーに集中した。この時、フライトが13時間あったので、睡眠もとれた。こうしたことをレースが終わるまで繰り返していく。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
「7大陸で一番キツかったのはフォルタレザです。めちゃくちゃ暑くて朝6時半には33度もあったんです。連戦でみんな疲れているし、コースは日向だし、熱中症になっている人もいて、私は途中、立ち止まって水を浴びながら走っていました。レース後、少し頭痛がしたので、アイシングを頭の上に乗せていました。マイアミまでのフライトの時間は7時間しかなかったんですけど、そのおかげで頭がすっきりしたんです。他の選手は、前日の熱中症を引きずっている感じの人が多くて、動きが悪い中、私は撮影用のカメラを持つのをやめてサブ3をするぐらいの勢いで突っ込みました。ラストレースで1位を獲れてゴールできたので、すごくうれしかったです(笑)」
最終日はトップを取り、しかもトータルで5日間19時間7分の世界記録を達成、総合2位に入った。故障せず、リタイヤせずに走れたのは、これまでの経験が大きかった。
「このレースの前に1週間、毎日、皇居でフルマラソンを走るというのをやって怪我して、1か月走れなくなったんです。その失敗があったので、リカバリーをきちんとするのを心掛けるようになりました。飛行機の中は、座席をフルフラットにしてマッサージルームみたいにしていましたね。あと、オリジナルドリンクを給水場に置かせてもらったり、細かいところにも気を配ることで、びっくりするぐらいダメージが少なかったんです。サハラの時は命の危険を感じたレースになりましたが、今回は体調を崩すこともなく、ある意味、楽しく走れました」
大会前より明らかに体が絞れ、身体の変化を感じたが、同時にレースを走る選手たちの関係にも変化が見られた。大陸をひとつずつ走破するごとに仲間意識が芽生え、ライバルというよりも同じ目標を達成するクルーになっていった。
「このレースは、普通のマラソンと違ってトップ選手は最後にゴールした人を待って、みんなで移動するので、ずっと同じ時間を共有しているんです。だから、どんどん仲良くなって、ゴールしたらここで休んでとか、これ食べてとか、すごいポジティブな空間が広がって感動しました。21年のサハラ砂漠が人生最大の過酷さで最大の感動だったんですけど、7大陸は走ったことの感動よりも人のやさしさとか、お互いを思いやる気持ちとか、私は走ることが好きで、その姿を見せることでみんなに元気を与えることができるとか、いろんなことを改めて感じることができました。今後、競技を続けていく上で私にとっては大きなターニングポイントになったと思います」