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斎藤佑樹に憧れた早実「背番号1」が米挑戦 ガス営業マン生活で覚醒した“奇跡の物語”

「WASEDA」のユニホームで7年間戦った【写真:本人提供】
「WASEDA」のユニホームで7年間戦った【写真:本人提供】

1か月にわたる米挑戦、前例なき道の原点は「斎藤佑樹」に憧れた早実

 13日から3月14日まで1か月、戦いに出る。最初の9日間はフロリダで行われるベースボール・スカウティング・リーグ(BSL)に参戦。参加者でチームを編成し、実戦形式のトライアウトとなる。続いて約3週間、アリゾナを中心に行われるアジアン・ブリーズに転戦。1つのチームとしてMLBマイナー、米独立リーグ、メキシカンリーグと戦い、メジャーなどのスカウト陣にアピールする。

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 武器は強さを増した直球に、落差のあるフォーク。「大谷投手、田中投手を見ていてもアメリカでは落ちる球がカギになっている」とイメージを膨らませる。1年間、フォームを見直す過程でスライダーも使えるようになった。ただ、将来のメジャーリーガーを目指した猛者が各国から集ってくる。しかも、自身は実戦から離れている身。当然、厳しさは理解しているが、しかし――。

「社会人時代に投げ方がわからず、でも未練があるから……という形だったら行けないけど、自分の実力で挑めるところまで来られた。野球がダメになっても、死にはしない。結婚もまだない。それなら、もう少し自分の人生で挑戦してもいい。あと2年、好きなように自分の人生を生きてもいいのかなと。だから、まずはアメリカで成り上がることに挑戦してみたい」

 今回は有給休暇を使って1か月間を過ごし、現地でプレーする道を模索。その後はNPB挑戦も視野に、野球を続ける環境を求める。1年間、サラリーマンを経て、学ぶこともあった。「自分でアポを取り、話を聞いてもらうの繰り返し。一つのモノを売ることがどれだけ大変なのか」。会社に申し訳なさを感じながら、最後は背中を押してくれた。応援してくれる存在が覚悟をより深めた。

JX-ENEOS時代の挫折をバネに再起を目指す【写真:本人提供】
JX-ENEOS時代の挫折をバネに再起を目指す【写真:本人提供】

 前例のない挑戦でも構わない。原点は「都の西北」にある。文武両道の学校で野球をやりたいと思い、早実の存在を知った。中1で斎藤が夏の甲子園で優勝した時、「こんな強いチームなのか。斎藤さん、カッコイイな」と憧れた。入学すると、自分たちで練習メニューを考え、実践するスタイルに驚いた。自立と自律が求められる環境で思考力を磨き、早大まで7年間の時を過ごした。

「だから、アメリカ行こうなんて思うのかな」と笑う。斎藤を始め、清宮幸太郎(日本ハム)、重信慎之介(巨人)らを育てた恩師の和泉実監督には「お前はそういうヤツだから」と笑われたが「やるだけやれ。お前だけの人生じゃなくなった時は考えろ。迷惑をかける会社にもしっかりと尽くせ」と温かいエールを送られた。出発は明日13日。「WASEDA」の魂とともに、太平洋を渡る。

「もちろんプレーヤーとしてはアメリカのメジャーリーガー、日本のプロ野球選手になりたいのは大前提。その区切りは2年間に決めた。でも、きっと野球は自分に一生ついて回ると思う。いずれ、野球に関わる何かをしたい。仕事か、ボランティアかは分からない。ただ、その可能性を広げるために行く意味もある。1か月、向こうでやることが大きいものになるし、大きいものにしたい」

 アマ球界のエリート街道から一転、どん底を味わいながら、人知れずに這い上がろうとする24歳。サラリーマンから野球で米国へ。前例はない。しかし、「挑戦」は若さの特権でもある。己の右腕一本で未来を切り開くため、内田聖人は野球の母国に飛ぶ。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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