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「日本を追い越した国に共通する特徴が」 世界に新たな強化の潮流、指揮官の構想には「大学世代の活用」――エディー・ジョーンズ独占インタビュー

日本を追い越した国には「それぞれに共通する特徴がある」

「日本は(一時)ランキングが下だったジョージア、イタリア、フィジーに順位を越されていますが、それぞれの国に共通する特徴がある。ジョージアには、代表チームと同時にブラックライオンという実質上2つの代表チームが存在していて、ヨーロッパ・スーパーカップという大会に参加している。そこで若い才能を発掘しているのです。イタリアはベネトン、ゼブレ(・パルマ)という2つのプロチームを、同じように若い選手の強化に役立てている。フィジーも、フィジアンドゥルアをスーパーラグビーに参加させて、優秀な選手たちのスキルを磨いているのです」

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 このような、ナショナルチームの強化と同時進行で、代表メンバーや候補選手で編成されたチームを編成して強化を図る形は、日本のラグビーファンなら思い浮かべるチームがあるかも知れない。

「日本には、ゴールデンピリオドと呼んでいい時代があり、2015年には6人の日本選手がスーパーラグビーでプレーしていました。2016年から19年まではサンウルブズも存在していた。現在、国内ではリーグワンがあるが、国際舞台でも代表のセカンドチームが高いレベルでプレー出来るような環境にもっていくことが肝かなと思っています。今の状況の中で、そのような環境をどうやって作り上げるかを日本協会とも話を続けている最中です」

 多くのラグビーファンはご存知のように、サンウルブズは当時世界でも最高レベルのリーグと位置付けられていたスーパーラグビーに、日本からも参加しようという日本ラグビー協会の戦略から誕生したプロチームだ。南半球強豪国の代表選手クラスで編成されるチームとリーグ戦を繰り広げることで、日本選手の競技力を推進させ、代表強化に直結させるというシナリオは見事に成功して、ホスト開催された2019年W杯でのベスト8進出を後押しした。だが、代表の躍進の陰で、サンウルブズのスーパーラグビー除外をリーグ側が決定。日本という遠隔地への遠征による負担や、放映権料など経費問題が大きな理由となったが、日本ラグビー界は未だにサンウルブズ消滅という損失を埋め切れていない。

 一方で、先に挙げたフィジー、ジョージアらが、日本がサンウルブズを活用した代表強化で実現した成功事例を辿るようにして、日本を追い抜き、さらなる強化を進めている。このような強化の考え方は、実はW杯で覇権を争うようなチームでも進んでいる。

 26日に日本代表と戦うオールブラックスは、同時進行でニュージーランドXV(フィフティーン)という準代表のヨーロッパ遠征を行い、メンバーの一部は日本戦要員として来日メンバーに帯同している。22日に都内で取材に応じたオールブラックスのロバートソンHCは、この2チームによる強化について「この先も(2つのチームによる強化を)継続していく予定です。何故なら、オールブラックスの選手層の深みを作っていきたいからです」とその重要性を認めている。

 11月に日本とも対戦するイングラドらヨーロッパ勢は、すでに6か国対抗の2軍大会と位置付けられるチームによる対戦を続けており、アイルランド代表は2022年7月のNZ遠征で、過去には海外ツアーの定番だったミッドウイークマッチを設けて、テストマッチで十分なプレー時間を確保出来ない選手の実戦経験を増やしている。ウェールズも、2025年のオーストラリア遠征ではスーパーラグビーチームとの対戦を組んでいるなど、各国セカンドチーム強化を加速させる。

 数シーズン前なら、強豪国も代表チーム単体でメンバー枠を増やすなどの工夫もしながら、若手をテストマッチで起用して選手層の厚みを増大させることにも取り組んできた。だが、膨らみ続ける収益性も踏まえて、商品価値の高い試合が求められるテストマッチ以外のゲームを創り出して、育成環境を整備しているのだ。

 日本代表に目を向けると、このような世界の流れをどこまで追っていけるのかという点では難しさもある。エディーはHC就任直後から、トレーニングスコッドの合宿を行い、積極的に若手選手を代表合宿に招聘して世代交代を進めようとしているが、これも見方を変えると、本来はセカンドチームで鍛えるべきレベルの選手まで、代表HCが面倒を見ているとも解釈出来る。

 エディー自身は、可能性を秘めた若い世代を自分の手元で育成することにも積極的だが、本来、代表チームはその時点で最強のメンバーを集めて戦い、“可能性組”は代表に準じるチームで腕を磨くのがあるべき姿だろう。現状は、代表チームに様々な“負担”が強いられ、勝つことという第1のミッションに集中できないようにも見える。確かにエディー就任の経緯の中で、協会側の「若手育成」という希望も同意の上での就任ではあるが、何にプライオリティーを置くべきかという方向性を、協会、強化サイドもしっかりと話し合い、明確化して共有する必要がある。

 今年の6、7月には、代表メンバーと選外選手を交えたジャパンXVを編成してマオリオールブラックスと2試合を戦ったが、継続的な強化には至っていない。日本協会ではNZ同様にパートナーシップを結ぶオーストラリア、イタリアなどの諸協会と連携して、セカンドチームやユース世代による交流・強化も視野には入れているが、今秋も一度は浮上したオーストラリア代表クラスとのゲームが立ち消えになるなど、なかなかギアを上げられないのが現状だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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