「日本を追い越した国に共通する特徴が」 世界に新たな強化の潮流、指揮官の構想には「大学世代の活用」――エディー・ジョーンズ独占インタビュー
ニュージーランド(NZ)代表オールブラックス戦(26日、神奈川・日産スタジアム)、そしてヨーロッパ遠征へと準備を進めるラグビー日本代表エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)。独占インタビュー後編では、フランス視察も行った指揮官が、昨年のワールドカップ(W杯)を終えて動き始めた世界各国の新たな強化の潮流をどう読み取るのか、そして日本代表の強化を進めていくのかを聞いた。(取材・文=吉田 宏)
エディー・ジョーンズ独占インタビュー後編
ニュージーランド(NZ)代表オールブラックス戦(26日、神奈川・日産スタジアム)、そしてヨーロッパ遠征へと準備を進めるラグビー日本代表エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)。独占インタビュー後編では、フランス視察も行った指揮官が、昨年のワールドカップ(W杯)を終えて動き始めた世界各国の新たな強化の潮流をどう読み取るのか、そして日本代表の強化を進めていくのかを聞いた。(取材・文=吉田 宏)
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10月最初の1週間をエディーはフランスで過ごしていた。
「理由は2つです。1つは齋藤直人(スタッド・トゥールーザン、SH)、テビタ・タタフ(ボルドー・ベグル、No8)の2人が11月のテストでプレーで出来るかの確認です。そして、もう1つはTOP14(フランス1部リーグ)のゲームの視察です」
すでに発表されているように、フランスリーグに参加中の2人はヨーロッパ遠征から日本代表に合流予定だ。日本代表のコアメンバーへと成長を続ける選手のコンディションを確かめ、意見交換するのと同時に、競技力、大会運営と世界で最も成功しているといわれるリーグを視察してきた。
「大会運営も素晴らしかったし、観客の雰囲気もいい。毎試合チケットが完売するほどの人気で、ラグビー自体のクオリティーも高い。以前のフランスのリーグは、フィジカルとタフさだけのラグビーだったが、今はスピード、ボールを動かすという部分でも大きく変貌している。それに伴いフィットネスも高まっていると思う。過去にはスーパーラグビー(南半球諸国によるプロリーグ)から様々なアイデアがもらえるという考えだったが、今はTOP14がその役割を果たしている」
1987年に第1回大会が開催されたラグビーW杯の歴史を振り返ると、過去10度の大会で9回は南アフリカ、NZ、オーストラリアの南半球勢がウェブエリス杯(優勝杯)を掲げている。40年以上に渡り、世界最先端のラグビーは南半球が牽引してきたと言っていいだろう。他の地域よりも積極的にプロ化を推進してきたこともあり、代表チームの実力だけではなく、スーパーラグビーなども使った実験的な戦術、スキルの導入や国際規模のルール改正などラグビーの進化を促してきたのも南半球諸国だった。
しかし、最近数回のW杯をみると地殻変動も起きている。昨秋に南アフリカがW杯連覇を果たすなど“南高北低”という状況は変わらないが、その一方で、南半球ではなかなか得られない豊富な資本力を持つフランス、英国などが、プロリーグ運営と競技力アップ、同時に国際試合、大会の開催・運営能力では巻き返してきたというのが、いまの流れだ。日本にも世界のトップ選手が大挙来日する一方で、よりハイサラリーで、ハイレベルなラグビーを求めて、多くの選手がヨーロッパのプロリーグに集まっている。その最高峰に位置するのが、フランスTOP14だ。
もちろんエディーの訪仏は、日本代表が11月にフランス入りした時のことも踏まえた“敵情視察”でもあったが、もう1つの重要な目的があった。
「フランスでは4人のトップコーチと会って、いまラグビーはどんな傾向があるかなどの話を聞いてきた。私自身をアップデートするような情報を得るのが目的です。歳はとっても成長は必要です。そういう点でも、TOP14は素晴らしい大会になっているのです」
話を聞いたのは、錚々たる顔ぶれだ。トゥールーザンを昨季リーグ連覇に導いたウーゴ・モラや、チームを33年ぶりの国内リーグプレーオフに導き、初のTOP14準優勝を遂げたボルドーのヤニック・ブリュ、エディーのイングランドHC時代のコーチで、スタッドフランセのHCに昇格したポール・ガスタードらと情報交換をしてきたという。モラらが日本選手所属チームの指導者という都合もあるが、いずれも世界最強リーグを牽引するようなコーチたちから、戦術、トレーニング方法など最先端の情報やトレンドを収集して、極東の島国の代表チームに落とし込もうとしている。
インタビューは、このフランス視察ばなしあたりからエディーの熱量が高まっていった。取材する側で事前に用意していた質問として、世界のラグビーの戦術やスキルが大きく変わる“ポストW杯”のシーズンに、エディーが何を考え、どんな情報に関心を抱いているかと聞くつもりだったが、こちらからの質問の前に本人の口から“回答”が溢れ出した。