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ラグビー日本、世界最強への挑戦 番狂わせに耽々「NZと対戦するなら今だ」21年前に起きた“事件”再現へ――エディー・ジョーンズ独占インタビュー

打倒“最強軍団”は果たせるのか。ニュージーランド(NZ)代表オールブラックスを迎え撃つリポビタンDチャレンジカップ(10月26日、横浜・日産スタジアム)、そしてイングランド代表らと対戦するヨーロッパ遠征へ向けて13日から強化合宿(宮崎ほか)を再開したラグビー日本代表。チームを率いるエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が単独インタビューに応じた。過去7戦全敗の強豪からの金星を奪うためのヒント、そして世界最先端のラグビーで何が起き、日本はどう進化を進めるのか。エディージャパンを取り囲む課題とチームの挑戦を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

エディー・ジョーンズ【写真:Getty Images】
エディー・ジョーンズ【写真:Getty Images】

エディー・ジョーンズ独占インタビュー前編 26日のオールブラックス戦への覚悟を問う

 打倒“最強軍団”は果たせるのか。ニュージーランド(NZ)代表オールブラックスを迎え撃つリポビタンDチャレンジカップ(10月26日、横浜・日産スタジアム)、そしてイングランド代表らと対戦するヨーロッパ遠征へ向けて13日から強化合宿(宮崎ほか)を再開したラグビー日本代表。チームを率いるエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が単独インタビューに応じた。過去7戦全敗の強豪からの金星を奪うためのヒント、そして世界最先端のラグビーで何が起き、日本はどう進化を進めるのか。エディージャパンを取り囲む課題とチームの挑戦を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

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 オールブラックス戦に備えて宮崎合宿入りした直後に取材に応じてくれたエディー。インタビューは、世界最強クラスの相手に勝つための取り組みから始まった。

「まず首都圏と宮崎2手に分かれての3日ほどの合宿を行いました。FWはセットピース、そしてBKはパスキャッチ、そしてブレークダウンに取り組んできた。そこの基本的なスキルにしっかりと取り組みながら、我々のゲームプランを進めていきたい」

 始動の3日あまりではあったが、敢えてFWを首都圏、BKは拠点の宮崎に分けた変則日程の狙いは明らかだ。FWにスクラム、ラインアウトでチーム以外の相手との出稽古の必要性を感じてのもの。14日には横浜キヤノンイーグルス、15日は浦安D-Rocksとのセットプレーの“やり合い”に取り組み、宮崎ではここまでのテストマッチで続出したハンドリング、連繋ミスの修正に力を注いだ。

 ビッグネーム揃いの秋のテストマッチシリーズ。その中でも、自他共に認める「ラグビー王国」との一戦はシリーズ開幕戦であり、第2次エディージャパン1年目の国内最終戦。新体制スタートから8戦目は、最も困難な相手との戦いとなるのは間違いないが、常に勝利への野心を滾らせるエディーにとっては絶好の“獲物”と対峙するゲームでもある。このチャレンジャブルな対戦の価値について、指揮官は10日に行われた代表メンバー発表会見でこう語っている。

「オールブラックスとの対戦は、いつも最高の指標になるような試合です。過去数十年で80%に近い勝率を誇るチームですし、我々としては現状確認が出来る素晴らしい対戦になると考えています」

 その「指標」となるビッグマッチへ選んだメンバーは36人(10日発表時)。選手たちは強化合宿で篩にかけられ、今季国内最終戦、そしてヨーロッパでのフランス、イングランド戦に挑む。顔ぶれをみると、夏のテストマッチシリーズまでの代表および日本XV合宿参加者 32人、昨シーズン以前の復帰選手1人、初選出3人。エディーは「今回のスコッドは、どちらかというと(新旧選手を)ミックスした布陣」と、No8姫野和樹らのテコ入れに触れたが、世界トップ5が並ぶ秋の対戦相手を考えると、継続的に若手を積極起用したかなり意欲的な布陣でもある。

 対戦するオールブラックスは、現在は世界ランキング3位。アイルランド、南アフリカを追う位置にはいるが、日本の過去の挑戦は全て退けてきた。若い布陣で臨んだ直近の22年は38-31と接戦になったが、7度の対戦の1試合平均スコアは81-14 (小数点以下四捨五入)と日本を圧倒している。エディーにとっては、オーストラリア、イングランド代表指導者時代も渡り合ってきた宿敵でもあるが、単独インタビューでは興味深いオールブラックスの「いま」も語っている。

「NZは2012年から23年までは一貫性を持った、非常に強い時代が続いてきた。グレアム・ヘンリー、スティーブ・ハンセン、そしてイアン・フォスター(歴代HC)が、セットピースが強く、カウンターアタックを得意とした伝統的なNZのラグビーを作り上げてきた。それが、スコット・ロバートソンHCの体制に替わって、すこしラグビーの形も変わったのかなと思っています」

“レイザー(剃刀)”の異名を持つロバートソンHCは、現役時代はリコー(現リコーブラックラムズ東京)でもプレーして、クルセイダーズを率いた9シーズンでスーパーラグビー7度の優勝を遂げた名将だ。NZ国内でも長らく待望論が高まっていた指揮官の就任だったが、アルゼンチン、南アフリカに黒星を喫するなど、ここまでの24年シーズン成績は6勝3敗。ラグビーチャンピオンシップ最中の8月には、アタック担当として手腕が期待されたレオン・マクドナルド・アシスタントコーチ(AC)が早くも辞任するなど、高い期待感からすれば「順風」までには至っていない。微細な戦術の変化はあるが、伝統的なオールブラックスのスタイルは変わらない。その中で、エディーはメンバー編成を大きな変化だと指摘する。

「ここまでのチームを象徴する選手たち、それはアーロン・スミス(SH、トヨタヴェルブリッツ)やオーウェン・フランクス(元PR、現日本代表AC)、ブロディ・レタリック(LO、コベルコ神戸スティーラーズ)にサム・ホワイトロック(元LO、埼玉パナソニックワイルドナイツ・アドバイザー)といった選手ですが、彼らのようなゲームを安定させる存在が抜けたこと。そして新しいHCということで、まだチームを仕上げるには時間が短い。今はどうやっていくか、これから5、6年先へどんな選手になっていくのかというバランスを模索している段階だと思う」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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