「大谷翔平を思い起こして下さい」の真意 ついに初勝利も…熟成途上露呈したラグビー日本代表の課題
ラグビー日本代表は25日(日本時間26日)、カナダ・バンクーバーで行われた同国代表とのパシフィックネーションズカップ(PNC)プール第1戦を55-28で制して、新体制でのテストマッチ4戦目で初勝利を飾った。9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の下で「超速ラグビー」という新たなコンセプトを謳い、若手を積極的に起用する中での待望のテストマッチ初白星。チームには自信と追い風にはなった一方で熟成途上も露呈。初勝利を遂げた80分間の戦いで浮かび上がった「超速」の課題を振り返る。(文=吉田 宏)
テストマッチ4戦目で初勝利を飾ったエディー・ジャパンを検証
ラグビー日本代表は25日(日本時間26日)、カナダ・バンクーバーで行われた同国代表とのパシフィックネーションズカップ(PNC)プール第1戦を55-28で制して、新体制でのテストマッチ4戦目で初勝利を飾った。9年ぶりに復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の下で「超速ラグビー」という新たなコンセプトを謳い、若手を積極的に起用する中での待望のテストマッチ初白星。チームには自信と追い風にはなった一方で熟成途上も露呈。初勝利を遂げた80分間の戦いで浮かび上がった「超速」の課題を振り返る。(文=吉田 宏)
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代表HC復帰後初めてのテストマッチ勝利に、試合後の会見では終始にこやかだったエディー。しかし、チームの戦いぶりを振り返るコメントに、新生日本代表の「いま」が滲んでいた。
「前半は我々が目指すラグビーが出来ていた部分が多かったと思います。フィジカル面も見せられたし、ボールを動かし続けることも上手く出来た。しかしながら、若いチームにありがちな、どうしても前のめりになるシーンが多かった。『もっともっと』という気持ちでボールのコントロールが上手く出来ない場面が、後半特に多く見られた。フィジカリティーやプレーの精度が落ちた面がありましたが、敵地バンクーバーで歴史を変える記録的な勝利を収めることができたと自負していますし、結果としては良かったと思います」
議論を呼んだ代表HC復帰から、キャップ対象外のマオリオールブラックス戦で1勝を挙げたもののテストマッチは3連敗。結果が欲しいのは選手以上に指揮官だったかも知れないが、チームのリアルな現実もしっかりと指摘した。
ここまでに敗れた相手は、イングランド(世界ランキング5位、対戦当時)、ジョージア(同14位)、イタリア(同8位)の3か国。ランキングでは日本(12位から14位へ降格)の上位ないし同等のチームだったのに対してカナダは21位。1991年ワールドカップ(W杯)ではベスト8という実績を持ちながら、昨秋のフランス大会は出場を逃すなど長期低落傾向にあるチームからの白星だった。
ゲーム内容も、エディーが語ったように諸手を挙げて喜べるものではなかった。前後半のスコア(38-7、17-21)からも明らかだが、後半はかなり劣勢の戦いを強いられた。終了直前に攻め急いだカナダが自陣から仕掛けた強引なカウンターアタックを、インターセプトして日本が奪った5点を差し引けば、苦闘ぶりがさらに鮮明になる。カナダ戦過去最多の55点をマークしながら、地域獲得率47%、ボール保持率48%というデータが苦闘を物語る。
前半4分の先制トライが示すように、勝つために重要な序盤戦の主導権争いで優位に立ったのは日本代表だった。テストマッチ初先発ながら、得意の素早いパスワークと果敢な防御をみせたSH藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が振り返る。
「カナダ戦へ向けてフォーカスしていたフィジカルでFWがしっかり前に出てくれたおかげで、持ち味であるスピードを出せたと思います。10番の李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)とのコミュニケーションもうまく取れていて、迷うことなくプレー出来ました」
藤原が語ったように、FWの奮闘で日本代表が目指すテンポでボールを展開出来たこと、そして若いHBコンビによるスピード感のある連続攻撃が、前半戦の戦いを支えたのは間違いない。この2つの勝因はここまでの3敗からの改善と評価したいが、ゲームを観ていて気になったのは日本のパフォーマンス以上にカナダの防御だった。