[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

ドーピング違反で考えた「死」 身に覚えのない不正、五輪を絶たれても…今、生きてスポーツをする理由――競泳・古賀淳也

17年ブダペスト世界水泳に出場した古賀さん【写真:Getty Images】
17年ブダペスト世界水泳に出場した古賀さん【写真:Getty Images】

命を絶つことが頭をよぎったからこそ思う「スポーツをする意味」

 今年3月の国際大会代表選考会を最後に引退しましたが、トレーニングや水泳は続けています。今、生きていてよかったと思える瞬間は常日頃ある。心の余裕を感じた時です。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 練習後に疲労を感じながら座り、「はあー」とボーっとする時間。そういう時にこそ「あぁ、生きているんだな」と改めて思い直します。心地よい疲労感です。勝った後の興奮に生きている喜びを見出す人は多いと思いますが、僕の場合はホッとした時です。

 何かに一生懸命に取り組まないと、ホッとした瞬間や幸せを再び実感できないと思います。しっかり山があって、谷があること。平坦なままだと生きている実感は湧きづらいと思うんですよね。スポーツはその一つの方法です。僕の場合はスポーツをやることで山ができています。

 ひと休みした時に「ああ、生きていてよかった」と余暇を感じることができる。だから、何かに一生懸命に取り組む。限られた時間の中、自分が楽しんで生きる意味をどう見出すか。毎日余裕がなく、何かに追われ続け、周りを見ることなく必死に人生を過ごす中、「なんで自分は生きているんだろう」と考えてしまうこともある。それはアスリートも一緒です。

 毎日きつい練習を繰り返す中、「なんでやっているんだろう」と落ち込む時もあります。選手が競技人生で生きる意味を見出すことと、社会で働いている方々がそれぞれの人生で意味を見出だすことは、結局のところ同じだと思うんです。

 流してしまいがちですが、忙しさ以上にホッとした瞬間を感じられる時があるはず。お風呂に入る瞬間、コーヒーの1口目、ベッドに入った時でもいい。何かを一生懸命やったからホッとできる。

 僕は仕事が泳ぐこと。毎日繰り返されるトレーニングや生活の中で自分が楽しめるのが余暇の部分。本来なら重要視されないところにあえてフォーカスして、自分が何に対して感動、喜び、快感を味わうのか。そこを突き詰めていくための一つの手段として、スポーツがあるのかなと思います。

 今の主な活動は小学生への水泳教室です。日々体を動かし、どう教えるか頭を整理する。突き詰めることは今もできているので、ホッとする瞬間がありますね。僕にとって、スポーツはそういう役割をしてくれています。

■古賀 淳也 / Junya Koga

 1987年7月19日生まれ、埼玉・熊谷市出身。37歳。5歳から水泳を始め、春日部共栄高から早大に進学。09年ローマ世界水泳で100メートル背泳ぎ優勝。50メートル背泳ぎは同大会と17年ブダペスト世界水泳で準優勝、14年アジア大会(仁川)で3連覇、日本選手権で3連覇含む9度優勝。16年リオ五輪400メートルリレーで8位入賞に貢献。18年4月にドーピング違反で国際水泳連盟から4年間の出場停止処分を受けたが、スポーツ仲裁裁判所に意図的ではないと認められ、2年間に短縮。20年8月に競技復帰。24年3月の国際大会代表選考会を最後に現役引退。50メートル背泳ぎの24秒24(09年)は日本記録。身長181センチ。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)


W-ANS

1 2 3
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集