17-52大敗から見る第2次エディージャパンの肖像 開始4分満たずに機能した「超速」の可能性と課題
大敗の中で評価すべきは弱点といわれてきたスクラムとラインアウト
エディーの鉄則が勝利に繋がらなかった理由は明白だ。リーチのコメントが示すように、自分たちのミスからスコア出来ず、結果的に相手に重圧を掛けきれなかったことだ。失点も、イングランドに許した全8トライ中7個が日本の反則を起点に奪われたものだった。攻守のミスが、自分たちのゲームプラン、ゲームスタイルを崩してしまう典型のような負け試合だった。
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終盤の2トライがせめてもの抵抗にはなったが、40点差以上離された残り15分からの反撃にあまり高評価をつけるのは禁物だろう。超速を意図したアタックについても、立ち上がりこそグラウンドの縦軸にボールを止めず、常に横に展開しながらの繋ぎが見えたが、イングランドの固い防御に単調さが増えていった。試合後の会見で、「開始15分、20分までは主導権を握ったが、この時間帯のプレーは求めていたスピードなのか。攻撃のバリエーションは満足か」という質問に、指揮官はこう課題を指摘した。
「もっとペースを上げて、もっとバラエティーのある攻撃が出来れば理想的だと思う。今日に関しては、どちらかというとセカンドマンのプレーが、なかなか効果的に機能出来なかった。これはイングランドの強固な防御に重圧を受けてしまったからだと思うし、どうしてもダイレクトなプレーが多かった。上手くいっていた部分もあると思うが、今後に関しては、もっとスピードのある、多彩なアタックをしていきたい。そこには選手の連携が重要です」
宮崎合宿では、多彩なムーブ(サインプレー)を何重にも駆使して、相手防御とのコンタクトをかわしてボールを繋ぐ変幻自在なアタックが見られたが、本番では期待ほどには生かされなかった。だが、準備段階と実戦の齟齬があるのは当たり前のことだろう。イングランド戦で十分にパフォーマンス出来なかったものを、次戦でどこまで実践できるか。この積み重ねしかないだろう。
この大敗の中で評価をするべきは、ジャパンが伝統的には弱点といわれてきたスクラム、そしてラインアウトだろう。
スクラムを見てみると、日本は自分たちの5度のスクラム全てを成功。これはイングランドの成功率78%を上回る。試合を通じてスクラムはお互いに反則を繰り返していた印象だったが、要になるFW(フォワード)第1列のキャップ数は、3人合計207のイングランドに対して日本は右PR竹内柊平(浦安D-Rocks)のわずか3のみ。経験値が物を言うといわれるポジションで、この格差でもスクラムを崩壊させずに、時には押し勝ちながらBKにボールを供給できたのは大きな成果だろう。エディーも会見で思わず「スバラシイ」と日本語で称賛したが、スクラムのかじ取り役のHO原田は言葉に自信を込める。
「最初のスクラムで、あまり相手の重さを感じなかったので結構行けるなと思っていきました。オーウェンが毎日フロントローを集めて、セットアップをしていた。横との繋がりや後ろ(LO)との繋がりなどをずっとやってきた。それがいい結果につながったと思います」
代表デビュー戦、しかもスクラムが伝統のイングランド相手に、全く物怖じしない胆力も感心するが、原田が名指ししたオーウェン・フランクス・アシスタントコーチ(AC)の存在が早くもスクラム強化に好影響を与えているという。フランクスACはニュージーランド代表で118キャップを誇り、日本代表入りする直前まで現役を続けていた。コーチ経験は少ないが、白羽の矢を立てたエディーは「スクラムの知識は素晴らしい」と、その世界の最先端でスクラムを組んできた経験値を買って呼び寄せた。
同じように日本選手にはない高度な経験値をチームに落とし込むことを期待されたのが、先に原田が挙げたマットフィールド・テクニカルアドバイザーだ。そのラインアウト理論は、イングランドを率いるスティーブ・ボーズウィックが、コーチ修行時代に教えを乞うため南アフリカまで出向いたほど。原田は、そのコーチングを「ラインアウトでの個々の選手のフットポジションまで細かくこだわり、選手の目線をも指摘する」と日本人以上の細やかさと指摘する。ラインアウトは、原田と、同じBL東京のLOワーナー・ディアンズ、FLリーチとのコンビネーションにも助けられて、イングランドの成功率94%を上回る100%という完成度をみせた。
BK(バックス)の展開力、スピ―ドに拘る超速ラグビーだが、攻撃の起点となるセットプレーで重圧を受け、球出しが不安定になれば、当然いいアタックは続かない。2015年には、元イングランド代表LOボーズウイックにラインアウト、そして元フランス代表HOマルク・ダルマゾにスクラム強化を託したエディーが、今回さらに世界での経験値、実績を持つ2人をコーチングチームに呼んでいる。