日本ラグビーは「世界トップ10でも恵まれている」 協会専務理事が代表新HCに求めることは?
日本の一番の強みは国内リーグのレベルと協会との良好な関係
日本の国内状況を理解した上で、世界の潮流に対して、どんなラグビースタイルを打ち出せるのか。これこそが、2019年大会以降の日本代表の取り組み、そして今回のプール戦敗退という結果を踏まえた上で、専務理事という立場から代表指導者に求めるものだ。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
この4年間と同様に、これからもどこまで強化時間、環境を確保できるかは協会側の大きな課題になるのは明らかだろう。だが、その一方で、専務理事は代表強化という観点で見た国内のラグビー環境には前向きだ。
「例えばアルゼンチンやウルグアイ、チリといった国を見ると、国内で十分なレベルのリーグを持てていないのが現状で、今後の強化は非常に難しくなってくると思います。日本はリーグワンがあって、ラグビーに対して大きな期待が様々な人から寄せられています。国内でそれができるのは、世界のトップ10の国の中でも相当恵まれた状況にあると思っています。なので、どうやってリーグワンなどの国内の環境を上手く使っていくかが、これかの代表強化には大きなポイントになるでしょう」
リーグワンは、昨季までも海外トップクラスの選手が大挙して加入してきた。加えて、W杯を区切りに移籍が活発になるというこれまでの風潮と同様に、23年大会後の今季は世界最優秀選手に選ばれたニュージーランド代表NO8アーディ・サベア(コベルコ神戸スティーラーズ)ら、さらに多くのトップ選手が加入している。監督、コーチを見ても、世界屈指の手腕、実績を持つ指導者が並ぶ。このような環境が、日本人選手の進化を促し、代表強化にもポジティブな影響を及ぼすことは、当然のことながら協会が期待してきたものでもある。そして日本協会首脳として各国の事情をつぶさに見てきた経験から、同専務理事は日本のリーグワンのさらなる可能性も感じている。
「今、世界トップレベルのリーグと考えられるのはイングランド(プレミアシップ)とフランス(TOP14)だと思います。でも、この2つのリーグは、ユニオン(協会)と上手くいっていないのははっきりしています。それに対して我々の一番の強みは、国内リーグがすごく高いポテンシャルを持ちながら、かつユニオンとの関係が非常にいいということです。この状況の中で、リーグワンを本当の世界トップレベルにしていくことが、先にお話した(代表強化の)時間的なところや選手のウェルフェア(による制約)などをカバーしていく大きなポイントだと考えています。これをずっと持ち続けられるかどうかが、今後の日本ラグビーの課題だと思います」
専務理事が指摘したイングランドやフランスでは、リーグと協会間が、代表クラスの選手のチームと代表での拘束時間やプレー時間、あるいはリーグ戦日程などの面で、常に対立してきた歴史がある。このような強豪国におけるリーグと協会の関係を見ると、日本が遥かに共同歩調をとっているのは間違いない。親会社である企業にとっても、自分たちのチームからW杯選手を輩出することが、企業のイメージアップ、宣伝効果などのメリットがあるからだ。しかし、リーグワンが掲げる事業化、プロ化がこれから段階的に進んでいくとしたら、イングランドなどと同じような対立や課題が浮上する可能性は否定できない。そのためにも、これからどう双方が共同歩調をとれるかを課題に挙げているのだ。