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大谷翔平グラブ6万個寄贈の背景にある危機感 「野球しようぜ!」の言葉にスポーツ記者が見た真意

「野球しようぜ!」。米大リーグ・エンゼルスからフリーエージェントとなった大谷翔平が、日本の子どもたちに呼びかけた。大谷は日本全国約2万の小学校にグラブを3個ずつ寄贈すると発表。「野球というスポーツに触れ、興味を持つきっかけに」とコメントした。トップアスリートの慈善活動という“いい話”として瞬く間に話題になったが、その背景にはスポーツ界に共通する課題がある。(文=荻島 弘一)

エンゼルスの大谷翔平投手【写真:ロイター】
エンゼルスの大谷翔平投手【写真:ロイター】

競技人口減少はスポーツ界に共通する課題

「野球しようぜ!」。米大リーグ・エンゼルスからフリーエージェントとなった大谷翔平が、日本の子どもたちに呼びかけた。大谷は日本全国約2万の小学校にグラブを3個ずつ寄贈すると発表。「野球というスポーツに触れ、興味を持つきっかけに」とコメントした。トップアスリートの慈善活動という“いい話”として瞬く間に話題になったが、その背景にはスポーツ界に共通する課題がある。(文=荻島 弘一)

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 大谷らしい規格外のサプライズだ。グラブは低学年向けの軟式用で、右利き用2個、左利き用1個をセットに、最大で約6万個がプレゼントされる。大谷から贈られたグラブを手に、笑顔でキャッチボールをする子どもたちの姿が目に浮かぶ。

 思い出したのは、今年3月のWBCで侍ジャパンを率いた栗山英樹監督の言葉。「野球の魅力を伝えたい」「野球を好きになってほしい」。頭に付くのは、必ず「子どもたちに」だった。野球界にとって深刻な「子どもの野球離れ」。栗山監督にも、大谷にも、危機感はあったはずだ。

 実際に、小学生の野球人口は激減している。プロアマ一体で普及、振興を目指す日本野球協議会によれば、2010年に29.6万だった学童野球(軟式)の登録選手数は、22年には17.0万人まで減少。硬式のリトルリーグ選手数も10年の1万2000人が22年には6000人と半減している(チーム数から推定された数字も含む)。

 もっとも、小学生の競技人口減少は、野球に限ったことではない。サッカーの4種(小学生年代)登録選手数も、14年の31.9万人をピークに22年は25.7万人。野球ほどではないにしろ、サッカー界にも危機感はある。

 小学生年代で人気のあるバスケットボール(ミニバス)は最近10年間15万人程度で横ばいだが、他の多くの競技は程度の差こそあれ登録選手数を減らしている。小学生の競技者が減れば中学、高校も減少する。競技を「見る」「支える」人口にも影響してくる。各競技にとって、小学生への普及が大きな課題になる。

 昨年末のサッカーW杯から3月の野球WBC、さらにバスケットボール、バレーボールのパリ五輪予選、ラグビーのW杯と今年は特に団体球技の活躍が目立つ。監督や選手が口にするのは「子どもたちのために」という言葉。選手たちは積極的にメディアに露出し、子どもたちと交流する機会を持ち、競技の魅力を発信する。普及に対する思いは、現場からも強く感じる。

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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