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「推し」のうちわが揺れる会場 アイドル化する男子バレー、爆発的人気と強化にある密接な関係

バレーボール男子日本代表が東京で開催されたワールドカップ(W杯)プールBで2位となり、来年のパリ五輪出場権を手にした。圧倒的な人気を背景に決めた、4大会ぶりの予選突破。過去にもあったブームを振り返ると、日本バレーボールの強化が人気と密接な関係にあったことが分かる。(文=荻島 弘一)

パリ五輪出場を決めた男子代表、会場は連日アイドルのライブのような盛り上がりだった【写真:AP/アフロ】
パリ五輪出場を決めた男子代表、会場は連日アイドルのライブのような盛り上がりだった【写真:AP/アフロ】

過去にもあったバレーボールブームからひも解く「アイドル化」の意味

 バレーボール男子日本代表が東京で開催されたワールドカップ(W杯)プールBで2位となり、来年のパリ五輪出場権を手にした。圧倒的な人気を背景に決めた、4大会ぶりの予選突破。過去にもあったブームを振り返ると、日本バレーボールの強化が人気と密接な関係にあったことが分かる。(文=荻島 弘一)

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「本当にみなさん、大好きです!」。バレーボール男子日本代表の高橋藍、ファンに向けたメッセージは印象的だった。7日、スロベニアにストレート勝ちしてパリ五輪キップを手にした後の言葉だ。「大好き」というフレーズに、ファンとの特別な関係を感じた。

 8チーム中上位2チームがパリ五輪出場権を得るW杯。出場権獲得を目前に、会場は信じられないほどの大声援に包まれた。スタンドでは応援バルーンが打ち鳴らされ、「推し」の選手名が入ったうちわが揺れた。まるでアイドルのライブのような盛り上がりだ。

 歓声を浴びて高橋や石川祐希主将、西田有志らが次々とポイントを奪う。選手は両手を広げ、さらにファンをあおる。「応援するファン」と「される選手」というだけの雰囲気とは異なる。「ともに戦う」というひりひりした緊張感とも少し違ってみえた。誤解を恐れずに言えば「一体となって盛り上げよう」という感じか。これこそが、バレーボール特有のムードなのかもしれない。

 爆発的な人気が、08年北京大会以来の五輪予選突破を後押ししたのは間違いない。入場券は売り出し直後に完売し、会場は連日超満員。テレビ視聴率は好調で、グッズも爆売れしているという。大会序盤でエジプトに敗れながら、奇跡的な巻き返し。応援に乗って、チームは勢いを増していった。

 思い出すのは、80年代後半。バレーボールブームが選手たちをアイドルにした。筆頭が現バレーボール協会会長の川合俊一。写真集やイメージビデオは出すだけ完売。女性ファッション誌の表紙に登場し、有料で練習をすれば整理券を手にした長蛇の列ができた。あえて比較をするなら、その人気は今以上だった。

 バスケットのBリーグはもちろん、Jリーグも誕生する前。野球のWBCもなく、ラグビーも注目されるのは早慶明大くらいだった。多くのファン(特に女性)が殺到したのも、他に選択肢がなかったから。Jリーグが全国に定着し、バスケットやラグビーなど幅広いスポーツで日本中が沸く今とは、状況が違った。

 ただ「人気だけ」ではなかった。80年モスクワ大会予選は敗れたが、ブームに乗って84年ロサンゼルス、88年ソウル、92年バルセロナと3大会連続五輪出場。メダルこそなかったが、サッカーやバスケットボールなど他の競技が五輪から遠ざかっていた時代に、唯一世界と戦い続けていたのがバレーボールだった。

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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