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サッカー日本代表、アジアで異彩放つ「個性」 韓国やイランも圧倒した伝統の力と「名手の系譜」

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は各国代表チームに脈々と受け継がれる伝統的スタイルについて。今夏行われたU-17アジアカップで見事に優勝した日本は、攻撃的なサッカーで相手を圧倒。技術とスピードに組織を掛け合わせるプレーは、日本の個性としてアジアで異彩を放っている。

U-17アジアカップで大会MVPに輝いた名和田我空。ゴールに対する機動力が出色だった【写真:Getty Images】
U-17アジアカップで大会MVPに輝いた名和田我空。ゴールに対する機動力が出色だった【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:受け継がれる各国の伝統的スタイル

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は各国代表チームに脈々と受け継がれる伝統的スタイルについて。今夏行われたU-17アジアカップで見事に優勝した日本は、攻撃的なサッカーで相手を圧倒。技術とスピードに組織を掛け合わせるプレーは、日本の個性としてアジアで異彩を放っている。

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 世界中がダイバーシティと声高に叫び、多様性が進むのはきっと好ましいのだろう。しかし、それは同時に画一化も生む。あらゆることを等しく許容することで、独特の行動規範や文化も押し流される。ダイバーシティの前では、不平等を生み出す可能性のある違いは、根こそぎ変化を余儀なくされるもので、同時に個性を生かす作業は、実は至難の業なのだ。

 サッカーの世界でもスタイルは多様化して混ざり、画一的になりつつある。

 かつて、サッカーはストリートで生成され、突出した個性を生み出してきた。それぞれの路地の流儀で、オリジナリティに溢れた技を見せ、それによって相手を凌駕する。感性豊かな選手同士の戦いだった。

 ただ、現在はほとんどの選手が幼い頃からストリートではなく、クラブチームで強化される。戦術を浸透させることによって、平均的に力を出させ、綻びを作らない。そしてリスクも孕む「個性」を重んじた登用よりも、「多様な仕事ができる能力の持ち主に仕事を分担させたほうが効果的」と確認されたのである。

 効率化が進む一方、意外性は少なくなった。サプライズは自らのクビを絞める。排除されるのは当然の流れだ。

 しかし、その国の伝統的プレースタイルまで消えてしまったのか?

 今年6月から7月に開催されたU-17アジアカップで、日本はウズベキスタン、インド、ベトナムとのグループリーグを首位で勝ち抜けている。準々決勝でオーストラリアを3-1で下し、今年11月に開幕するU-17ワールドカップの出場権を確保。そして準決勝ではイランを3-0で撃破し、決勝でも韓国を3-0と下し、見事に優勝を飾っている。

 ノックアウトステージでは3試合連続3得点。攻撃的布陣で相手を叩きのめし、大会を制した。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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