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日本の穴は「見えていた」 32点差の完敗、世界最強“NZ予備軍”が提示したラグビーW杯への宿題

「点」のタックルを残り2か月で「線」や「面」にできるか

 特訓の成果は、オールブラックスXV戦でも垣間見ることはできた。象徴的だったのは開始7分のCTB(センター)中野将伍(東京SG)のタックルだ。状況判断に長けた防御突破を正代表でも見せてきたオールブラックスXVのCTBジャック・グッドヒューが、内側にアングルを変えて切れ込んできたランを、一撃のタックルで仕留めてみせた。

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「とりあえずしっかり力を合わせて前に出ることは、いい形でできたと思う。(合宿でのタックル練習で)自信はつきましたが、精度のところはもっと上げていかないといけない。80分間、試合を通して多くの回数をできるかが課題になってくる」

 メンバーの中でもおしゃべりなタイプではない中野だが、言葉はしっかりと選んでいる。26歳の大器が語るように、チーム全体を見ても、要所でオールブラックス予備軍を仕留めるタックルもあったが、80分間の組織防御には繋がらなかった。ラグビーはボールを繋ぎ、攻撃フェーズを重ねてトライを狙う競技だ。オールブラックスXVの選手にタックルを浴びせても、代表3キャップを持つSO(スタンドオフ)スティーブン・ペロフェタを軸に何度も防御ラインを崩された。弟ザーンとともに将来を嘱望されるWTB(ウイング)ベイリン・サリヴァンは、こう振り返った。

「日本のライン防御のスペースは、結構外目に確実に見えていました。日本側も上手く埋めてきていて、パスをカットされる場面もありましたね。そこのスペースを確実についていくことは、非常に難しいと思いながらプレーをしていました」

 日本の対応を称えながらも、オールブラックスXVは早い時間帯から日本防御の隙を見出していたのだ。この試合の初トライ直後の前半16分に、自陣ゴール前の左展開でペロフェタの防御突破から日本陣内まで攻め込んでPGを決めると、積極的に仕掛けるアタックを増やしギアを上げた。前半こそ相手を1トライに抑えた日本だったが、後半はダムの決壊のように4トライの猛攻を受けた。日本がライン防御を上げてプレッシャーをかけてきても、オールブラックスXVは浅いラインと深いランを使い分けて、ボールを動かし、スペースを見つけて突いてきた。その結果、浦安合宿で“地獄の練習”とも呼ばれたタックルメニューは、実戦ではまだ散発的なヒットに留まり、5トライを許した。

 途中出場のFL姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)も「チーム全体として今取り組んでいるコリジョンのところはすごく出せたと思います。ただ後半に、ちょっとコネクション(連携)を失ってしまい、イレギュラーな形で崩されてしまった」と指摘。“点のタックル”を、ここからの国内4試合、2か月という準備期間で、どこまで線に、そして面として組織的に相手の攻撃を封じ込める武器に転化できるかという挑戦は始まったばかりだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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