「3人プロを出し97人犠牲」では意味がない 高校サッカーの“見落とし”にドイツ人指導者が警鐘
サッカー・Jリーグで横浜フリューゲルスや浦和レッズなど、4クラブの監督を務めたゲルト・エンゲルス氏は、1993年のプロ化以降、日本サッカーの急速な発展を当事者として見続けてきたドイツ人指導者だ。しかも初来日した当初は滝川第二高校サッカー部のコーチを務め、近年は女子サッカーの強豪INAC神戸レオネッサを率いるなど、Jリーグ以外の日本サッカーの姿も熟知している。
ゲルト・エンゲルス「日本サッカー育成論」第2回、大所帯の強豪校の現状に疑問符
サッカー・Jリーグで横浜フリューゲルスや浦和レッズなど、4クラブの監督を務めたゲルト・エンゲルス氏は、1993年のプロ化以降、日本サッカーの急速な発展を当事者として見続けてきたドイツ人指導者だ。しかも初来日した当初は滝川第二高校サッカー部のコーチを務め、近年は女子サッカーの強豪INAC神戸レオネッサを率いるなど、Jリーグ以外の日本サッカーの姿も熟知している。
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30年以上にわたって母国と日本をつなぐエンゲルス氏に聞く育成論。今回は欧州からの評価が高まっている日本人選手の才能と、育成年代の実情について。今も昔も多くのサッカー少年が憧れる高校の強豪校は、100人以上の部員を抱えるところも少なくない。エンゲルス氏は、そうした変わらない現状に警鐘を鳴らす。「1人ひとりをもっと大事にする」指導を実現すれば、より多くの才能が芽を出すと力説する。(取材・文=加部 究)
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横浜フリューゲルス最後の監督として1998年度の天皇杯を制したゲルト・エンゲルスは、2002年に日韓ワールドカップが開催される頃から日本の急成長を実感するようになった。
「日本代表のサッカーも進化し、決して簡単ではないグループリーグ(ベルギー、ロシア、チュニジアと同居)を突破してノックアウトステージへ進出した。初めて日本のサッカーは、本当に強くなるかもしれないと思った。申し訳ないけれど、まだ最初の頃に欧州へ進出していった選手たちの移籍は、半分以上がコマーシャルの意味合いを含んでいたと思う。でも香川真司、長谷部誠、吉田麻也らが活躍し始める頃からは、ただ在籍するだけではなく純粋に助っ人として評価を高めている」
コロナ禍以降はドイツを拠点にしてきたエンゲルスも、現地での日本人選手へのスカウティングの変化を感じている。
「浦和レッズの監督時代(2008年)に埼玉スタジアムでバイエルンと試合をして、その時にスカウティングスタッフも来日しました。でも当時、彼らのターゲットは日本代表にデビューをしている若い選手たちだけでした。でも今ではシュツットガルトなどは、日本人選手たちが信頼度を高めた(遠藤航、伊藤洋輝、原口元気)こともあり、U-16の代表選手たちの名前も知っています。実際私もシュツットガルトの新聞社から『どうして日本人選手たちは、こんなに活躍できるのか』という取材を受けました」