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「給料は安いが…」 欧州クラブ幹部の日本人、若手にオーストリア移籍を勧める理由

ザンクト・ペルテンのテクニカルダイレクターを務めるモラス雅輝氏【写真:編集部】
ザンクト・ペルテンのテクニカルダイレクターを務めるモラス雅輝氏【写真:編集部】

オーストリアには「ステップアップしやすい利点がある」

 オーストリアのブンデスリーガは、なかなか日本には馴染みが薄いが、昨シーズン終了時点ではUEFAランクで8位に躍進。ちなみに日本人選手を重用するセルティックが牽引するスコットランドは9位、またシント=トロイデンを中心に日本の選手たちの進出が目立つベルギーは13位だった。

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「UEFA(欧州連盟)各国の1部リーグを比較すると、オーストリア・ブンデスリーガはボールを受けてから離すまでの時間が最も短いというデータが出ています。もちろん、4大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア)などのように高いインテンシティー(強度)の中でしっかりとボールを回せる選手が少ないので、ミスが出やすい傾向も見て取れますが、相手がボールを保持した時に激しいプレッシングをかけるインテンシティーの高いスタイルが男女ともに育成段階から浸透しています」

 現在オーストリア・ブンデスリーガ2部で首位に立っているザンクト・ペルテンは、ドイツ1部のヴォルフスブルクと国際業務提携を結んでおり、もし日本人選手の獲得に動く場合は、両クラブが協力して次のようなプランを共有しているという。

「まずカテゴリーAは、すでに欧州で活躍中のフル代表の選手が対象になり、業務提携先のヴォルフスブルクが獲得し、そのままそこでプレーします。次にカテゴリーBは、アンダーカテゴリーの代表選手を対象として、ヴォルフスブルクかザンクト・ペルテンが獲得し、最大で2シーズンまでザンクト・ペルテンでプレーし、遅くとも3シーズン目からはヴォルフスブルクに籍を移す。さらにカテゴリーCは、Jリーガーを対象としてザンクト・ペルテンが獲得し、ここで成長してもらいます。極力22歳以下の選手の発掘を目指しますが、明らかに即戦力なら28歳以下まで対象を広げます」

 ベルギー、オランダ、ポルトガル、さらにはスコットランドなどと比べると、日本人選手との縁が薄いオーストリアだが、欧州での最初のチームとしての条件には恵まれている。

「インテンシティーも競技レベルも比較的高いので、最初は苦労するかもしれません。しかし外国人枠がなく、これはドイツ語圏独特の特徴だと思いますが、法外な違約金設定をしません。むしろ南野拓実(ザルツブルク→リバプール/現モナコ)や奥川雅也(ザルツブルク→ビーレフェルト)のように20歳代前半で活躍した選手は『どんどん移籍していってください』というスタンスなので、ステップアップしやすい利点があります」

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モラス 雅輝

ザンクト・ペルテン テクニカルダイレクター 
1979年1月8日生まれ。東京都調布市出身。16歳でドイツへ単身留学、その後指導者の道へ進む。オーストリアサッカー協会のコーチングライセンスを保持し、男女のトップチームや育成年代を指導してきた。2008年途中から10年まで浦和レッズのコーチ、19年6月からはヴィッセル神戸コーチとなりクラブ史上初の天皇杯優勝を経験した。21年からは再びオーストリアに戻り、22年7月にザンクト・ペルテンのテクニカルダイレクターに就任した。

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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