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ユーススポーツ界に衝撃の研究結果 スポーツの個人競技とメンタルヘルス問題の関係

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「スポーツの個人競技とメンタルヘルス問題の関係」について。

今回は「スポーツの個人競技とメンタルヘルス問題の関係」について【写真:写真:AC】
今回は「スポーツの個人競技とメンタルヘルス問題の関係」について【写真:写真:AC】

連載「Sports From USA」―今回は「スポーツの個人競技とメンタルヘルス問題の関係」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「スポーツの個人競技とメンタルヘルス問題の関係」について。

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 アメリカで発表されたひとつの研究結果が、子どものスポーツ界にちょっとした衝撃を与えている。

 カリフォルニア大学フラトン校のマット・ホフマン助教らが、チームスポーツ、個人スポーツ、その両方に参加、どちらにも参加していない子どもたちのメンタルヘルスを調査した。対象は米国の9歳から13歳までの1万1235人の子どもである。(※調査はコロナウイルスで多くのスポーツ活動が中断される以前に行われた)

 得られたデータを分析したところ、チームスポーツに参加している子どもはメンタルヘルス上の困難を抱えることは少なく、不安、抑うつ、社会的問題、注意力の問題の兆候を持つ可能性が低いことがわかった。これは予測した通りだった。しかし、それと同時に、個人スポーツだけに参加している子どもは、スポーツ活動に参加していない子どもよりも、メンタルヘルス上の困難に直面する可能性があることも浮かび上がってきたのだ。この結果は、調査をした研究者グループたちにとっても驚きであったという。また、個人スポーツとチームスポーツの両方に参加している子どもは、スポーツ活動に参加していない子どもと比べてメンタルヘルス上の困難において、ほとんど差がなかった。

 アメリカでは、子どものスポーツとメンタルヘルスに関する調査が蓄積されており、子どものスポーツ活動参加はメンタルヘルスに好ましい影響を及ぼすとされてきた。ただし、子どもたちが燃え尽き症候群になったり、摂食障害を引き起こしたりすることも報告されている。こういったネガティブな影響には、強度の高いトレーニングや激しい競争などの環境要因や、完璧主義や自尊心の低さといった個人要因があるとされている。この研究は、どのようなスポーツ活動のカテゴリーならば、メンタルヘルスや幸福感と関連するのかにアプローチしたものだった。

 ホフマン氏は大学の広報誌の取材にこのように答えている。「これまでの研究では、個人スポーツの参加は、チームスポーツの参加と同程度のメンタルヘルス上の利点はないようであるとされていたが、個人スポーツの参加はスポーツをしないことと比較して、より悪いかもしれないというエビデンスはなかった」

 ホフマン氏は、個人スポーツに参加することがメンタルヘルスの問題を引き起こすのだ、と拙速に結論づけることは避けなければいけないとしている。その一方で、しっかりとした形で個人スポーツに参加している子どもたちには、多くのプレッシャーやストレスがかかっていることはわかっているし、失敗や負けを共有するチームメートがいないため、多くの責めを負っているのかもしれないと指摘する。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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