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ラグビー日本代表、善戦の裏に見えた格差 世界ランク3位・豪州戦データが示す課題

日本はハイパントによって失点リスクが増大

 問題は、このハイパントがどこまで効果的だったのかだろう。手元のカウントでは、日本代表はこの試合で前後半合わせてハイパントを12回蹴っている。この12本が、その後にスコアに繋がった回数を見てみると興味深い。日本は1トライ、2PGに結び付けたのに対して、オーストラリアは3トライを奪っている。オーストラリアが奪った全5トライの6割は、日本のハイパントからのものだった。日本はパントから相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪ってスコアもしている一方で、それ以上に相手に攻撃を継続されて失点するリスクがあったことになる。

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 終盤まで1トライでひっくり返るような試合を繰り広げた中で、グラウンド中央付近でキックをすることで相手に攻撃権を手渡す戦術は、結果的には高いリスクを伴うことになった。2023年へ向けては、このままでは不十分だ。まずパントから、より有効なプレッシャーを相手にかけるためには、ボールの滞空時間を伸ばすためのキックの高度はさらに必要だろう。ミッドフィールドへのハイパントを再検討するのか、それとも蹴っても簡単に失点を許さない防御を整備し、作り上げるのかという“宿題”が残されたことになる。

 このハイパントからの失点には、オーストラリア側のキャッチング技術も大きく影響していたように見えた。パントされたボールをジャンプしながらのキャッチは、日本よりも1ステージ上の技術がある。イメージとしては、通常なら落下してくるボールを垂直に近いジャンプで捕球するのだが、オーストラリアの選手たちは前方に飛び上がりながら、しっかりと高度を保ちながら最高到達地点での捕球を繰り返していた。捕球後の着地点も“垂直跳び”よりも前方になるため、サポートする選手がジャンパーを前へ押し出すようにラックを作り、より安定した球出しを見せていた。彼らの飛び上がるための足の運び方や、ジャンプのフォームを見ると、ラグビーではなく跳躍種目のコーチに指導を受けているように感じてしまうほどだ。

 安全確保を重視するレフェリング、ルールは年々高まっている。空中でボールを捕球しようとする選手への接触は、カードも出されるような時代だ。どのチームもハイパントやキック処理の精度アップ、新たな技術の導入には力を注いでいる。オーストラリアだけが特別な技術を持っているわけではないが、ジャンプの高さとフォーム、捕球、着地後の安定したボールのリサイクルなどの細やかな技術の精度、徹底度は、キックを多用する今の日本も2023年までに身につける必要があるだろう。

 細かな技術面での差は、ラックにも見られた。これもジャンプと同様に、すでにスタンダードなスキルの一つになっているが、オーストラリアはボールを持った選手が、日本選手のタックルを受けた後に、もう1ステップ足を踏み出して、前につんのめるようにして倒れながらラックを形成していた。

 日本代表選手の場合は、フィジカル面でやや劣る分を、仲間のサポートで補おうという意識が強いために、コンタクトした後は相手側に背中を向けて自陣側にボールを置こうという動作が多い。体格やパワー、そしてコンタクトが起きた周囲の状況にもよるが、オーストラリアのように、個々の選手が、わずか数10センチでも前に出て、ブレークダウンを作ろうという意識は、おそらく世界のトップ4を争う舞台では重要になる。来日したあるニュージーランド指導者が、「2メートル(前進)か死か」とコーチしたことを聞いたが、まさにこのような意識が必要だろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19年と6大会連続で取材。

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