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15人制より番狂わせの多い7人制ラグビー 男子日本、メダル獲得の可能性を徹底解剖

メダル獲得へ挑むラグビー7人制男子代表【写真:JRFU提供】
メダル獲得へ挑むラグビー7人制男子代表【写真:JRFU提供】

岩渕HCが掲げる“ビー・ラグビー”で旋風吹かせられるか

【戦略戦術】東京五輪へ向けて岩渕健輔ヘッドコーチが掲げてきたのが“ビー(蜂)・ラグビー”だ。前回大会のバックアップ要員から今回正メンバーを勝ち取った藤田慶和は「世界一速く動いて、鋭く、素早く動き回って相手を圧倒するラグビー」と説明する。このスタイルを実践するために、選手たちは持久力、スピード、判断の早さを磨き続けてきた。

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 松井主将は6月のオンラインインタビューで、五輪開幕までの残された時間でやるべきことを、こう話している。

「短い期間だが、相手の分析だったり、どういう作戦で相手を負かすかをチームとしてしっかり取り組んでいきたい。より一層チームがまとまっているなというところがあるので、これをもっと加速させて、僕たちもセブンズファミリーと言っているので、家族の力をしっかり結束させていきたい」

 15人制以上に個人技が重視される7人制だが、日本代表にとっては組織で戦うことが重要だという意識はメンバー全員が理解しているはずだ。このような個よりも集団で戦う意識は、15人制代表にも通じる日本代表独自のアイデンティティでもある。世界の列強相手に、自分たちのラグビーを遂行できるかが勝負のカギを握るのは間違いない。

 対戦相手以上に完成度が求められる日本代表だが、細部にこだわり尽くすのは国民性でもある。5年前のリオの初戦では、優勝候補のニュージーランドを周到な分析と対策で倒している。大会後には、コーチ、選手から、ニュージーランドとの初戦に全てを賭けていたと聞いた。試合当日の起床からキックオフ時間までを分刻みで完璧にシミュレーションして臨んだニュージーランド戦だったが、当時のメンバーだった坂井克行は「気持ち悪いくらい試合で練習と同じことが起きたし、相手が、そうやってきた。準備していた全てがはまったという感じだった」と、シナリオ通りの試合が出来たことが金星に繋がったと振り返っている。この周到さをフィジー相手にもできれば、誰もが予期していなかった結果が訪れる可能性は残されている。

 今回も、プール戦で最も勝つことが難しい相手フィジーとの初戦が、日本が決勝トーナメントに進出するための最大のポイントになる。もちろんフィジーから金星を挙げても、次戦の英国、最終戦のカナダに勝てる保証はない。だが、短期決戦である7人制では、与えられた時間の中で、いかに勢いをつけるかは重要なポイントになる。フィジーとの初戦に全てを賭けることが重要だ。

【ミッション】結論から言えば、もしメダルに辿り着けなければ、日本ラグビー協会、代表チームの戦略としては失敗と評価せざるを得ない大会になる。

 前回のリオ大会での4位という成績は、日本全土を熱狂させた15人制代表でも、いまだに辿り着いたことがない高みだ。15人制よりも番狂わせの多い7人制だが、リオの日本代表が、金メダル候補のニュージーランド相手にも完璧なまでの勝つ準備をして結果を残したという事実は、2019年大会のベスト8に劣らない価値がある。

 だが、前回五輪後、協会首脳陣は世界4位という快挙を遂げた瀬川智広ヘッドコーチの解任を決めた。その理由は、次の五輪で目指すのはメダルであり、世界4位以上にチームを強化できる指導者を求めたからだ。この大きな決断を下したのは、現在も男女子7人制代表のナショナルチームディレクターを務める本城和彦、現ヘッドコーチの岩渕健輔両氏だ。

 選手は、あてがわれた大会で、対戦が決まった相手を倒すことに集中して戦えばいい。だが、日本ラグビーを司る組織が、進むべき道筋を真剣に考え、選択してきたかが問われる大会になるのは間違いない。日本のファンにメダルを届けることで、3年後のパリ、そしてその先へ、描き、進んできたロードマップが本当に正しいのかを証明してほしい。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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