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女子マラソンが世界で勝てない理由 16年経っても「最後の五輪女王」野口みずきの憂い

「THE ANSWER」は各スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、第一線を知る立場だからこその視点で様々なスポーツ界の話題を語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」をスタート。2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、陸上界の話題を定期連載で発信する。

アテネ五輪で金メダルを獲得した野口みずきさん、現役世代の走る距離の少なさを指摘した【写真:Getty Images】
アテネ五輪で金メダルを獲得した野口みずきさん、現役世代の走る距離の少なさを指摘した【写真:Getty Images】

「THE ANSWER スペシャリスト論」女子マラソン・野口みずきさん

「THE ANSWER」は各スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、第一線を知る立場だからこその視点で様々なスポーツ界の話題を語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」をスタート。2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、陸上界の話題を定期連載で発信する。

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 今回は「女子マラソンが世界で勝てなくなった理由」。野口さんを最後に女子マラソンで日本人の五輪メダリストはおらず、日本記録2時間19分12秒も16年間破られていない。選手たちが怪我のリスクを恐れてしまう背景、アフリカ勢とのプロ意識の差などを解説し、「いかに動物的になるか」と日本人が再び世界の頂点に立つために必要なことを説いた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 日本人最後の五輪女王は憂いていた。バルセロナ五輪で銀メダル、アトランタ五輪で銅メダルの有森裕子、シドニー五輪金メダルの高橋尚子に続き、野口さんは日本人4大会連続のメダル獲得者。アテネでは土佐礼子が5位、坂本直子が7位と出場3選手とも入賞し、2000年代途中まで「マラソン黄金時代」とも呼ばれた。

 以来3大会、日本人は入賞者すらいない。なぜ、日本人は世界で勝てなくなったのか。要因を問われた野口さんは、芯を持って語った。

「2007、8年以降からある一定の期間まで、故障のリスクを恐れて冒険できていない選手が多かった気がします。マラソンランナーだったらとにかく距離を走って、しっかりと足の土台をつくることが大切。距離を走ることによって自信が生まれ、それが後押ししてくれるのがマラソンです。距離を走れる選手が少なくなったように感じます」

 150センチの小さな体で世界と戦った現役時代。歩幅の大きな「ストライド走法」で先頭を走るダイナミックな姿は、見る者にとっても爽快だった。信条とした言葉は「走った距離は裏切らない」。最も走ったのは五輪3か月前の月1370キロ。2か月前も1300キロ超と追い込んだ。調整期間に入った本番前の1か月は、1000キロ弱に落としていった。

 当時、他の女子ランナーの練習距離を把握していたわけではないが、少なくともアテネ五輪に出場した3選手は同じくらい走っていたという。一方、野口さんが聞いた限りでは、最近の選手は追い込みの時期でも1000キロほど。よく走る選手でも1200キロ台にとどまっているそうだ。

 なぜ、怪我のリスクを恐れてしまうのか。野口さんは「子ども時代の過ごし方」を一因に挙げた。「私たちの時代は幼少期に外で遊ぶ人が多く、体が強かったような気がします。もちろんリスクとは隣り合わせですが、なんとか乗り越えて継続して練習ができていました」。子どもは日光を浴びながら運動することで骨がつくられ、基礎体力や運動能力も向上する。しかし、時代とともに生活習慣が変わった。

「その辺りでも違いが出ているのかなと。ある一定の期間(時代)の選手は外で遊ぶ機会が少なかったように思えて、故障が多くなってしまったのではないかと思います。なので、指導者も『リスクを恐れずにいきなさい』とは言えなかったのかもしれない。あとは中学、高校時代に過度な体重制限をしたことで骨がもろくなってしまい、実業団や大学に行ってから故障が多くなる。そういう傾向があったと思います」

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