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ラグビー大学選手権は通常通り開催できるのか ベテラン記者が提案する“対応策”

願いは「選手が完全燃焼」できるシーズンに

 ここで関西大学リーグについて触れておこう。今季の開催方針については先に触れている通りだ。その中で、残念なのは入れ替え戦の中止という判断だ。断わっておくが、これは現時点では正式発表されているのもではなく、あくまでも3日に行われた同リーグのリーグ委員会で方向性が固まったと言われている情報だ。

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 関西リーグでは、7月の段階で公式戦が1試合でも中止になれば、入れ替え戦も中止という方向性が示されてきた。例えば1部リーグの1チームがコロナ感染の影響で1試合を辞退した場合でも、2部以下の全カテゴリーの入れ替え戦が中止になるということだ。考え方としては、辞退チームが出るような緊急事態で公式戦も十分に出来ない状態なら、入れ替え戦も成立できないという判断だろう。似たような意見は、日本協会、関東協会内でも、大学ラグビー以外の事案も含めて耳にすることは少なくはない。管理する側としては、非常事態には厳しい判断もやむを得ないというスタンスなのだろう。

 関西リーグ所属のチーム関係者からは、「1チームの辞退で、すべての入れ替え戦までも中止となるのは疑問だ。昇格のない1部リーグは関係ないが、2部以下のリーグに所属するチームの選手は、昇格を目標に練習に打ち込んでいる。なんとか昇格の可能性を模索できないか」という声が聞かれる。方針どおり入れ替え戦が中止になれば、2部リーグ以下に所属する現在大学3年生の選手ですら、自分が上位リーグでプレーする可能性を断たれたまま、2シーズンをラグビーに打ち込み、卒業していくことになる。

 一部のチームからは「入れ替え戦を実施して、上位リーグのチームが敗れた場合は降格なし、下部チームが勝った場合は昇格し、来季は8から各10チームでリーグ戦を行う」という特例案も出されたものの、リーグ側の同意は得られなかったと聞く。

 繰り返しになるが、関西のみならず、関東、日本協会関係者には、この非常事態の下でも、少しでも多くの選手が出来る限り納得してシーズンを終えることができるようにしてほしいとお願いしたい。

 毎年学年が変わり、選手の顔ぶれも変わるのが大学チームだ。どんな状況下でのシーズンでも、彼らにとっては“特別な1年”なのは間違いない。学生たちが生きてきたわずか20年前後という時間は、その後の人生に比べれば、“たかだか20年”かも知れない。しかし、そのたかだか20年の大半を楕円球に捧げてきた選手たちに、この異常なシーズンを終えた時に「ラグビーを続けてきてよかった」と思わせることが出来るのは、ラグビー関係者、中でも協会で決定権を持つポストに就く役員、理事しかいない。

 見方を変えれば、大会の方向性を決め、運営に携わる人間にとって、こんなにやり甲斐のあるシーズンはないだろう。来春、再来年と社会へと巣立っていく学生たちは、選手として、そして膨大なファンとして未来の日本ラグビーを支えていく貴重な人材だ。非常事態のシーズンで、あらゆる可能性を模索し、その可能性を実現するために必要な柔軟な対応力を持ちながら、日本ラグビーの宝である学生たちを、どのように完全燃焼させることができるかというミッションにチャレンジするシーズンだ。

 大会スケジュールを決めること、方向性を決めることには、タイムリミットがある。どこかのタイミングで決断は必要だ。そして、そのリミットは刻々と近づいている。すでに、多くのことは内定・確定している段階だろう。

 しかし、アイデアというものはいくらでもある。それは買うことも出来るが、日本ラグビーの中枢に立つ人間は、アイデアを生み出すための豊富な経験と知識、そしてラグビーへの情熱を持っている。積み重ねてきた知と熱をフル稼働させて難局に立ち向かうことで、最良のアンサーが見つかることに期待したい。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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