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【#キミとONETEAM】「僕が『#ラグビーを止めるな2020』を始めた理由」―元日本代表・野澤武史

「#ラグビーを止めるな2020」を始めた理由は2つあると野澤さんは語った【写真:本人提供】
「#ラグビーを止めるな2020」を始めた理由は2つあると野澤さんは語った【写真:本人提供】

高校ラグビーに感じていた課題「強豪校と、それ以外の学校で進路が二極化」

 その背景には、高校ラグビーに感じていた課題がありました。強豪校の監督とリクルーターのつながりが強く、「あの選手はいいよ」「この選手はまだ決まってない」など、やりとりしながら進路が決まることが多い。しかし、県大会ベスト4からベスト8くらいで負ける学校の選手はルートがなく、素質があっても大学で続けることすら選択肢から外れてしまうことがありました。強豪校と、そこに入れない学校で選手の進路が二極化しているのかなと感じています。

18年から始めていた活動の一つが「ビッグマン&ファストマンキャンプ」です。全国のサイズのある選手、スピードのある選手を集めて合宿を行い、一芸に秀でた原石を発掘、育成しようというもの。このキャンプを企画するにあたり、きっかけとなった忘れられない出来事があるので、お話します。

 全国各ブロックの高校2年生のトライアウトを回っていた時、サイズがあって良い選手がいたのですが、翌年に「あの選手の進路はどうなったんですか?」と関係者に聞くと「彼は就職することになりまして……」と言われ、驚きました。その後は怪我もあり、県選抜などに入れず、地元で就職することになった、と。「大学の方が知っていたら、絶対声がかかっていただろうに」と、もったいない気持ちでした。

 九州、関東、近畿といったラグビーが盛んな地域は、それぞれに中心になる強い学校があり、どうしても強豪県、強豪校に代表選手が偏ってしまいます。そういう子たちがラグビーを選択せず、次のステージに行かないのは、すごくもったいない。なぜかといえば、それはラグビー選手としての成長曲線も関係しています。

 強豪校の選手は、小さい頃からラグビーをやっている子がほとんどなので、選手として早熟ででき上がっていることが多い。一方で、そうじゃない経験が浅い選手たちは伸びる時は、一気に伸びるもの。昨年のワールドカップ(W杯)日本代表を見ても強豪校の出身ではない選手も多いんです。そういう選手たちは正しい育成システムにハマると、その後に伸びる可能性があります。

 特に、サイズの大きい選手は成長するタイミングが傾向的に遅いもの。また、高校で足が速い選手は線がすごく細く、体ができ上がっている強豪校の選手と比べるとコンタクトの部分で見劣りしてしまうのです。だからこそ、彼らがグンと伸びるタイミングまでは大人が引っ張り、プレーできる環境を与えてあげたい。少なくとも高校、大学を7年計画としてつなげるという狙いが「ビッグマン&ファストマンキャンプ」にはあります。

 タレントを発掘するリクルーターの視点で、高校生を見るポイントもお話しておきます。人間性で言うと、もしキャンプで見る場合、私は「素直であること」を重要視します。自分の殻を作ってしまって「僕はそれ、やりません」という子がいますが、高校生レベルではアドバイスをよく聞く子の方が将来的に伸びると思う。

 プレー面でいえば、自分のこだわりを一つでも持っている選手は目につきます。例えば、僕が見た中国地方の無名校の選手は強豪校の選手に混じってプレーした時、臆するどころか、ボールを持ったら必ずひと工夫し、倒されても必ずオフロードでつなぐなど、なんとか爪痕を残してやろうとする。そんな姿が光って見え、キャンプから一気に成長。関東の強豪大学に進みました。

 僕としても、高校生たちが次のステージでもラグビーを選んでくれたらうれしいし、ラグビーの競技人口が増えていくこともうれしいです。今後は属人的な現場での発掘に加え、テクノロジーを使った発掘システムを構築し、よりヌケモレのない体制を築きたいと思っています。僕みたいな活動をしている人間があまり必要なくなることが目標なのかな(笑)

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