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低酸素トレを「理解してもらえなかった」 城西大駅伝監督が導入、転機になった1人の選手の挑戦

今年度の大学駅伝シーズンも佳境を迎え、毎年1月2日と3日に行われる正月の風物詩、箱根駅伝の開催が近づいている。前回大会王者で今季も10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝を制し、史上初の2年連続3冠を狙う駒澤大を止めるのはどこか――。「THE ANSWER」では、勢いに乗る“ダークホース校”の監督に注目。今回は2001年の創部からコーチとして関わり、09年から城西大学男子駅伝部を率いる櫛部静二監督に話を聞いた。新興校として短期間で結果を残している背景の1つにあるのが、櫛部監督が積極的に取り組む科学的トレーニングだ。中でも低酸素室は他大学より早く取り入れており、実際に効果も出ていることから選手も意欲的に取り組んでいるという。(取材・文=佐藤 俊)

今季の出雲駅伝で3位、全日本大学駅伝で5位の城西大学。日々の科学的トレーニングが成果として表れている【写真:城西大学】
今季の出雲駅伝で3位、全日本大学駅伝で5位の城西大学。日々の科学的トレーニングが成果として表れている【写真:城西大学】

箱根駅伝「ダークホース校の指導論」、城西大学・櫛部静二監督インタビュー第3回

 今年度の大学駅伝シーズンも佳境を迎え、毎年1月2日と3日に行われる正月の風物詩、箱根駅伝の開催が近づいている。前回大会王者で今季も10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝を制し、史上初の2年連続3冠を狙う駒澤大を止めるのはどこか――。「THE ANSWER」では、勢いに乗る“ダークホース校”の監督に注目。今回は2001年の創部からコーチとして関わり、09年から城西大学男子駅伝部を率いる櫛部静二監督に話を聞いた。新興校として短期間で結果を残している背景の1つにあるのが、櫛部監督が積極的に取り組む科学的トレーニングだ。中でも低酸素室は他大学より早く取り入れており、実際に効果も出ていることから選手も意欲的に取り組んでいるという。(取材・文=佐藤 俊)

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 今シーズンにおける城西大の快進撃は、大学駅伝の勢力図を変えつつある。城西大が強くなっているのは、選手の育成強化が実を結んでいるからだが、心肺能力と走力を高める低酸素室の使用など科学的なトレーニングにも積極的に取り組んでいるからでもある。戦力の薄い大学は、全体主義的な練習に取り組んだほうが早くチーム全体のレベルを上げることができるが、特別な選手は育成しにくい。城西大は、どんな練習をしているのだろうか。

――日々のトレーニングで、城西大ならではのメニューはありますか。

「他大学と比べて練習メニューに大きな違いはないと思いますが、うちの特徴で言えば低酸素トレーニングを取り入れていることです。高地でのトレーニング同様に酸素が薄い環境で、トレッドミルで持久力を高めていきます。10年ぐらい前に導入したのですが、最初は学生たちに理解してもらえず、苦労しました」

――学生たちに信じてもらえないというのは、どういう理由からだったのでしょうか。

「低酸素のトレーニングって、きついだけで目に見えて分かるものではないですよね。他大学ではあまり取り入れていないですし、それが本当に効果があるのか分からないので、なかなか受け入れられなかったんです」

――学生に受け入れられるようになったきっかけがあったのですか。

「絶えず説明はしてきたのですが、一番大きかったのはOBの山口浩勢が結果を出してくれたことですね。山口が東京五輪の3000メートル障害に出たいので、うちの低酸素で練習をやりたいと言ってきたんです。30歳でベストが8分30秒くらいだったんですけど、低酸素でトレーニングをすることで最終的に8分20秒までタイムが伸びました。30歳を超えて3000メートル障害で10秒も短縮し、東京五輪の代表に選ばれたんです。そういうのを目の当たりにして、学生たちも意欲的に取り組むようになりました」

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櫛部 静二

城西大 男子駅伝部監督 
1971年11月11日生まれ、山口県出身。城西大経営学部マネジメント総合学科教授。早稲田大1年時から主力として活躍し、箱根駅伝では2区に抜擢されるが、体調不良により後半失速するアクシデントに見舞われる。3年時には1区区間賞の快走で総合優勝に貢献するなど、箱根駅伝を4度走った。卒業後はエスビー食品に入社。実業団選手として活躍したが、2001年に競技を続けながら創部したばかりの城西大駅伝部のコーチに就任、09年から監督となった。10年と12年の箱根駅伝では過去最高の総合6位に導いた一方、個を伸ばす指導を心がけており、16年リオデジャネイロ五輪で5000メートルと1万メートルに出場した村山紘太、21年東京五輪3000メートル障害の山口浩勢らを育てた。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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