日本代表10番を育てた40年前の「ノーコーチング」 子供を“教えない”極意とは
浜本の教えを体現した、木村和司の“ちゃぶる”プレー
逆に浜本は30年以上前から「何もかも全てを教えるのではなく、自主性、個性を大切にして、自分で考え、自分で決定し、子供たちが勇気を持ってプレーできる指導へ」と舵を切ることを提唱し、試合が始まれば指導者にも父兄にも「ノーコーチング」を徹底してきた。
そしてまさに浜本の指導を見事に反映し、大成したのが日本代表でも10番を背負った木村だった。
大河FCの後輩に当たる畑が監督を務める広島観音高校(当時)が全国高校選手権への出場を果たした際に、木村は選手たちに向けて挨拶をした。
「みんな、サッカーをしていて何が楽しい?」
試合に勝つこと、ゴールを決めること……など様々な答えが出た。木村はニヤリと笑って話し始めた。
「ワシは、ピッチの中で相手をちゃぶる(翻弄する)ことだな。相手の嫌なことを見つけて、そこを突く。普段やったら苛めになるけど、ピッチの上では許される」
思えば、木村のサッカーは、相手の裏をかくことがテーマだったかもしれない。それを観る側はファンタジーと称賛した。
浜本の脳裏には、小学生時代の木村のエピソードがしっかりと刻み込まれている。