アスリートにとって睡眠が重要である理由 指導者も試合、練習、栄養ほど関心なき現実
スポーツ選手にとって、休むことも練習のひとつ。オーバーワークは、身体的な疲労や怪我だけでなく、精神的にも悪影響を与え、モチベーションの低下などを引き起こす。中でも、「睡眠」が選手の身体、精神に与える影響は大きい。スポーツの現場でもっと「睡眠」のあり方が見直されるべきだと語るのは、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授の西多昌規氏。西多氏の研究テーマは睡眠と運動、脳の関係性だ。スポーツ選手や指導者が知っておくべき、睡眠とパフォーマンスの関係性について聞いた。(聞き手=ドットライフ・種石 光)
「スポーツ指導者が知っておくべき、睡眠とパフォーマンスの関係性」前編
スポーツ選手にとって、休むことも練習のひとつ。オーバーワークは、身体的な疲労や怪我だけでなく、精神的にも悪影響を与え、モチベーションの低下などを引き起こす。中でも、「睡眠」が選手の身体、精神に与える影響は大きい。スポーツの現場でもっと「睡眠」のあり方が見直されるべきだと語るのは、早稲田大学スポーツ科学学術院准教授の西多昌規氏。西多氏の研究テーマは睡眠と運動、脳の関係性だ。スポーツ選手や指導者が知っておくべき、睡眠とパフォーマンスの関係性について聞いた。(聞き手=ドットライフ・種石 光)
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――西多先生の研究室で研究されているテーマにはどんなものがありますか?
「睡眠や体内リズムと身体運動との関連性を、脳神経科学的に明らかにしていくことをメインテーマにしています。『よく眠れたら上手くなる』『眠れないと下手になる』など聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。私の研究室では、睡眠がスポーツ選手のパフォーマンスにどんな影響を与えるか、科学的に解き明かすべく取り組んでいます。
今は自分の研究というよりは、研究室に所属する学生の研究指導をメインに行っているのですが、たとえば、今年大学院を卒業した学生は『クロノタイプ(※1)と空間認知能力(※2)の関係性』を研究していました。具体的には、夜型の人は朝、空間認知能力が低下してしまうのかどうなのか、どれくらい低下するのか、などを研究していました。その研究から一部見えてきたのは、ティーンエージャーは基本的に人生の中で一番、夜型傾向が強いようです。だから、早起きが苦手だったりします。そんなタイプの人が早朝に試合に出ても本来のパフォーマンスが発揮できないかもしれません。
またほかにも、現在指導している研究の中には、『仮眠と運動学習の関係性』についての研究もあります。連日仮眠をとることが人体に与える影響を調べていて、特定の期間連続で仮眠をとることで注意力がどう変わるのかなど調査しています。この研究は、授業中に寝てしまうスポーツ選手たちは怠けているのではなく、部活やバイト、勉強で十分な睡眠時間がとれていないことを証明するために始まりました。仮眠の有効性を解明したいと考えています」
――西多先生ご自身が今関心を持っているテーマはどんなものでしょうか?
「私自身は、すぐに入眠できるマットレスの開発などスリープテック(※3)と呼ばれる分野に関心があります。スポーツ選手が身に付け、日々のパフォーマンスを計測し、最適化する手助けを行うウエアラブル端末(※4)の研究にも興味があります。AI(※5)など最新のITを活用すれば面白い研究ができそうですね」