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柔道界の“最強の寝技師”が誕生した理由 地方の劣等感を排除し、伸ばした恩師の執念

「あれ、この子、寝技いけるんじゃないの?」、浜田に寝技の適性

 寝技中心の理由はそれだけではなかった。「男子で昔、鹿児島実業が団体で全国制覇をした頃があったんです。鹿実は寝技なんですよ。鹿児島実業の寝技は日本一を取るくらいだったというのを聞いたことがあったので、そういう郷土の柔道的な歴史だったり、いくつか重なって、寝技で勝つ柔道というか、それを主に取り組んだ感じですかね」。先輩たちが残した栄光のわだち。そこにヒントがあると考えたのだ。

 意外にも現役時代の吉村氏は「寝技は大嫌い」な選手だったという。「寝技の練習になったら、どんなふうにして流そうかなっていう感じで……。練習はしてこなかったですね」と力を抜くことばかり考えていた。生徒を鍛えるために、自身も勉強した。他校の指導者にアドバイスを求め、「寝技師」の名を轟かせた元世界選手権王者の柏崎克彦さんの映像素材を見て極意を吸収した。

 浜田に寝技の適性があると感じたのは、高校1年の秋だった。「あれ、この子、寝技いけるんじゃないの?」。浜田自身も手応えをつかむと、ますますのめりこんだ。浜田は吉村氏夫妻とともに、合宿所暮らしだった。他の部員より朝、早く出発する姿が決まった習慣だった。吉村氏はその理由を知らなかったが、浜田は誰もいない道場で柏崎さんの寝技の映像を見て研究を重ねていた。

 練習への真面目な姿勢は入学当初から目を引いていた。

「ものすごく頑張り屋だな、ということはほかの選手よりも強く感じました。本当に弱いので人形のように投げられるんですけど、すぐに立ち上がる。柔道は投げられたら照れ隠しというか、ゆっくり立ち上がって時間稼いでみたいなところもある選手もいるんですけど、浜田はすぐ立ち上がってすぐ向かう。すぐ向かえば、すぐやられるわけですよね。だけど、彼女の場合はすぐ立ち上がって、すぐ向かって、すぐ投げられて、すぐ立ち上がってというところはすごくよく見えました」

 寝技の名手は「寝技は裏切らない」「手順通りにしっかりこなせば、間違いなく取れる」と口をそろえる。「浜田は1つのことをやり始めたら、言い方が適性ではないかもしれないですけど、病的なぐらいにやめないんですね。そういう志向がある。寝技は基本的には力を入れ続けて相手を制するまで詰め込んでいく。そういうところは適性があったのかなと思います」と吉村氏は話した。

 人柄は明るく、大風呂敷は広げない。一つ一つ階段を丁寧に上っていくタイプだった。吉村氏は高校2年のときのエピソードを思い出す。

「九州大会で優勝した後、すぐに全国の優勝に向けて進むうのかなと思ったら、彼女の中ではちょっと空白の期間があったんですね。当時書いていた練習ノートにも目標の欄が空白の期間があって、そのときに話をしたことを覚えているんですけど、目標は?って聞いたら『う~ん』って言うんです。九州で優勝したから次はいよいよ日本一じゃないのみたいな話をしたんですけど、『う~ん』って。で、数日後にインターハイ優勝、日本一っていう目標を書いてきたんです。彼女は言ったことはやるタイプ。簡単には設定できない。言ってやらないことがあまりないんです」

 自分の現状と目標との距離感を冷静に分析。距離感がつかめたら目標を決め、それに向かって全力で突き進む。浜田の性格を理解した吉村氏は、その後も温かく成長を見守った。

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