なぜ、指導者に「俯瞰力」が必要なのか 為末大「同じ指導も言葉ひとつで結果が変わる」
バイアスを意識すれば、指導も変わる
「努力したのに意味がない」と選手が嘆いたとき、指導者がバイアスを意識していないと、「意味がないわけないだろう」とただ叱ることしかできないはずです。
選手の視点が変わるような話ができるかどうかが、いい指導者かどうかの分かれ道ではないかと思います。一方で、バイアスは個性そのものです。完全に無色がいいというわけではないので、バランスを考えながら、指導をうまくやっていかなければなりません。
ちなみに私が「この指導者はすごい!」と思ったのは、2006年7月から翌年11月までサッカー日本代表の監督を務めたイビチャ・オシム氏です。日本の文化的背景を理解したうえで、言葉を巧みに使っておられた印象があります。同じ指導内容でも、言い方ひとつで相手への伝わり方は全然違います。同じ指導でも結果がまったく変わるので、指導者は自分のバイアスを意識できる俯瞰力をつける必要があるのです。
(記事提供TORCH、第5回に続く)
https://torch-sports.jp/
■為末 大 / 為末大学学長
1978年生まれ、広島県出身。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者。現在は人間理解のためのプラットフォーム為末大学(Tamesue Academy)の学長、アジアのアスリートを育成・支援する一般社団法人アスリートソサエティの代表理事を務める。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著作に『Winning Alone』『走る哲学』『諦める力』など。
(スパイラルワークス・松葉 紀子 / Noriko Matsuba)