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遠征手続きから部費の口座管理まで 慶應高ヨット部が重んじる生徒の自主性

創設者・福澤諭吉が目指した慶應義塾の基本精神は、「自他の尊厳を守り、何事も自分の判断・責任のもとに行うこと」を意味するという。この精神を実践しているのが、慶應義塾高等学校(塾高)体育会ヨット部の面々だ。

インターハイ常連校に成長した慶應義塾高等学校・体育会ヨット部【写真:荒川祐史】
インターハイ常連校に成長した慶應義塾高等学校・体育会ヨット部【写真:荒川祐史】

インターハイ常連校に成長した慶應義塾高等学校・体育会ヨット部

「独立自尊」

 創設者・福澤諭吉が目指した慶應義塾の基本精神は、「自他の尊厳を守り、何事も自分の判断・責任のもとに行うこと」を意味するという。この精神を実践しているのが、慶應義塾高等学校(塾高)体育会ヨット部の面々だ。

 部を率いるのは、普段は数学を教える顧問の巴伸一部長と、ヨット部OBでもある加藤友章監督だ。20年以上顧問を務める巴部長は、ヨットの経験こそないが趣味はサーフィンと、海を愛する気持ちを生徒たちと共有する。実際の技術指導は、加藤監督をはじめとするOB有志が担当。土日祝に葉山港ヨットハーバーで海上練習を行い、平日の放課後は学校で活動。月曜日はミーティング、火水金曜日は陸上トレーニングに充てている。

 インターハイのヨット競技は、2人乗りヨットを操る団体競技「420級」と、1人乗りヨットを操る個人競技「レーザーラジアル級」で行われる。いずれも海上に設置されたブイを周回し、そのスピードを競うものだ。塾高ヨット部では「部活動の一環なので、チームとしてみんなで頑張ることを目指している」(巴部長)と団体競技の「420級」に限定。今年は関東大会で菅澤龍佑(3年)と小林大悟(3年)のチームが入賞し、インターハイ出場のチケットを手に入れた。インターハイでは1チーム4人の登録が可能なため、菅澤&小林コンビに、海老澤快(3年)と伊藤賢(3年)の主将・副将コンビが加わる。

 人間が櫂を漕ぐことなく、またエンジンを搭載することもないヨットは、セール(帆)に受ける風が唯一の動力となる。風の力を効率よく利用し、よりスピードを出すためにも、「基本的な技術が大事」と加藤監督は語る。

「ヨットを安定して走らせる、水平に保つということが、大きな基本です。技術がないと風を掴めないんですね。海に出るとヨットが傾くけれど、そうするとスピードが落ちてしまう。乗っている選手はハーネスを着けているので、風が強い時には身体を外に乗り出してヨットを起こしたり、自分の体重を利用しながらヨットを水平に保たせるんです。もちろん、どこに風が吹いているかを見たり、周回するブイの位置と風の強さを見極めながら、どっちに走っていけば風の力を最大限に利用できるかを考えるんですけど、そこには基本的にヨットを走らせる能力がないとダメ。基本的な技術がレースの8割くらいを占めるんじゃないでしょうか」

 大海原が戦いの場となるヨットは一歩間違えれば命が危険にさらされる。普段は学年の差を感じさせないほど仲がいい部員たちだが、「ヨットに乗る前の準備や道具の整備に関しては、先輩たちが後輩たちに厳しく指導しています」と巴部長。オンとオフの切り替えにはメリハリをつけている。

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