「強豪校の部活で才能を伸ばす方法」 清水商・川口能活×鹿児島実・那須大亮の考え
コロナ禍も「考えの引き出し」次第で成長の差に
そんな2人が高校時代のエピソードを明かす、印象的な機会があった。
「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する「オンラインエール授業」。インターハイが中止となった全国の高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画。5月27日に行われた授業で、川口氏と那須氏が全国のサッカー部120人と語り合った。
「インターハイ中止は前代未聞のこと。もし自分だったら、絶望的になったと思う。僕らも大人になっているので、いろんな可能性を知れるけど、高校生は不安しかないと思ったから」と参加の理由を明かした川口氏は、1時間の授業でこんな話をした。
「入学した時、まずは自分ができることやろうと、4つの目標を立てた。『チームでレギュラー』『県選抜に選ばれる』『アンダー代表に選ばれる』『冬の選手権に優勝する』と。紙に書いて部屋の壁に貼る。それをいつも見て、練習に行っていた」
「凄く強い学校だったので、難しかったけど……」と笑いながら、レベルの高い環境で意欲と才能を潰さず、成長につながった目標設定について披露。高校生たちに、まっすぐな思いを届けた。
今回のインタビューを実施したのは、その授業後のこと。
未曾有の感染症により、高校生は目標にしていた夏のインターハイが中止になり、誰もが味わったことのない経験をした。当然、先が見えない不安はあっただろう。しかし、練習も試合もできない状況は、また誰もが同じ。だからこそ、意識と行動次第で他の選手と差がつき、成長するチャンスは生まれる。
那須氏は「もちろん、切り替えるのは難しいのは分かっている」と断った上で、言う。
「大きな悩みだったり、悲しみだったり、たくさんのものを抱えたと思う。でも、人間は思いが大きければ大きいほど、それを何かに変換した時に大きな力を生む。考えようによっては(本来は)感じられることがないことを感じた、だから感じられることがある、と思うこともできる。
この出来事だから感じられたことを行動、考えに移し、新しいものを発見する原動力にしてほしい。今の大きな思いを力に変えた子たちがいれば、今年のインターハイができなかった世代から凄い選手が生まれると思っている。だからこそ、考えの引き出しをより多く持ってくれたら」
“強豪校で伸びた”2人の言葉には、今、高校生が才能を伸ばすヒントが詰まっている。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)