五輪の男子サッカーが「23歳以下」なのはなぜ? 意外と知らない導入までのFIFAとIOCの駆け引き
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
「シン・オリンピックのミカタ」#11 連載「オリンピック・トリビア」第6回
スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト「THE ANSWER」はパリ五輪期間中、「シン・オリンピックのミカタ」と題した特集を連日展開。これまでの五輪で好評だった「オリンピックのミカタ」をスケールアップさせ、4年に一度のスポーツの祭典だから五輪を観る人も、もっと楽しみ、もっと学べる“新たな見方”をさまざまな角度から伝えていく。「社会の縮図」とも言われるスポーツの魅力や価値の理解が世の中に広がり、スポーツの未来がより明るくなることを願って――。
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今回は連載「オリンピック・トリビア」。いろんなスポーツが行われる五輪を見ていると、それぞれの競技のルールやしきたりなど「よくよく考えると、これってなんで?」と不思議に思うことがないだろうか。スポーツ新聞社の記者として昭和・平成・令和とスポーツを40年追い続けたスペシャリスト・荻島弘一氏が、そんな今さら聞けない素朴なギモンに回答。オリンピック観戦を楽しむトリビアを提供する。第5回は「どうして男子のサッカーは23歳以下の制限があるの?」。
◇ ◇ ◇
Q.どうして男子のサッカーは23歳以下の制限があるの?
A.FIFAがW杯の価値を守りたかったから。
【解説】
IOCは、オリンピックを「世界最高の選手の大会」としています。陸上や競泳はもちろん、バレーボールも、バスケットボールも、オリンピックが「世界最高峰」ですが、サッカーは別。サッカーにはW杯があり、FIFAが「W杯こそが世界最高の大会」としているからです。
オリンピックのサッカーは1900年第2回パリ大会から行われています。04年創設のFIFAも、当初はこれを「世界最高の大会」と認めていました。ところが、アマチュア主義を守るオリンピックがサッカーで主流となっていたプロの参加を禁じていたことから、両者の関係がこじれます。
FIFAは30年、独自にプロの参加を認めた「真の世界一決定戦」としてW杯をスタート。その後、アマのオリンピックとプロのW杯は別の道を歩みます。戦後から70年代までの金メダルチームは、ハンガリーやソ連、ユーゴスラビア、ポーランド、東ドイツ、チェコスロバキアなど当時東側と言われた国の「ステートアマ」が占めていました。
変わったのは80年代。プロの参加を容認したIOCは、FIFAにプロ参加を求めます。しかし、W杯を「世界最高の大会」とするFIFAは拒否。オリンピックがプロの大会になると、W杯の価値が下がるからです。それでもプロ参加を求めるIOCに対し、FIFAは80年モスクワ大会から「W杯予選、本大会に出場した欧州と南米の選手以外」をオリンピックの出場資格とし、さらに92年バルセロナ大会からは「23歳以下」というルールを設定したのです。
もっとも、観客数や視聴率のためにスター選手を大会の目玉にしたいIOCはあくまでも年齢制限の撤廃を要求。FIFA側はこれを受けて「年齢制限なし(オーバーエイジ)の3選手を加えることを決めたのです。
ちなみに、オーバーエイジは3人以内ですから、この枠を使わなくてもOK。パリ大会の日本代表は24歳以上の選手を加えず、23歳以下だけでのチームで大会に臨んでいます。
(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)