陸上女子中長距離に風穴を開けた田中希実 野口みずきが絶賛する「21歳ながら」の凄さ
「THE ANSWER」が各スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、第一線を知る彼らだからこその視点でスポーツ界の話題について語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」。その一人として、2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが陸上界の話題を定期連載で発信する。
「THE ANSWER スペシャリスト論」女子マラソン・野口みずきさん
「THE ANSWER」が各スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、第一線を知る彼らだからこその視点でスポーツ界の話題について語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」。その一人として、2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが陸上界の話題を定期連載で発信する。
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今回は「日本中長距離界で異彩を放つ21歳・田中希実の魅力」。東京五輪女子5000メートル代表の田中(豊田自動織機TC)。21歳ながら1500メートルと3000メートルでも日本記録を持ち、中長距離界で大きな注目を集めている。ランナーとして、アスリートとして何が優れているのか。マラソンを専門種目とした傍ら、中長距離の経験もある野口さんに魅力を語ってもらった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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高い可能性を秘めたランナーが現れた。800メートルと1500メートルが中距離、3000メートル以上が長距離。日本の女子中距離は、1928年アムステルダム五輪800メートルで人見絹枝が銀メダル獲得して以降、世界と対等に戦ってきたとは言い難い。人気が高い駅伝やマラソンなど、世界と戦うのは長距離という認識が広がっている。
田中は兵庫・西脇工高時代はインハイ3年連続入賞など、早くから期待を集めていた。2018年にはU20世界選手権3000メートルで金メダルを獲得。19年世界選手権にも出場(14位)した本命種目の5000メートルでは、東京五輪代表に内定している。
昨年7月には非五輪種目の3000メートルで8分41秒35をマークし、福士加代子の日本記録を18年ぶりに更新。同8月にも1500メートルで小林祐梨子の日本記録を14年ぶりに塗り替える4分5秒27を叩きだした。1万メートルの新谷仁美(積水化学)らとともに「世界で戦う」選手を目指して急成長中。幅広い種目でトップレベルの実力を持ち、日本記録更新で歴史に風穴を開けた。
比較的ハイスピードで長時間動き続ける中長距離種目は、高い心肺持久力、効率のいい走りのほか、ラストで競り勝つ瞬発力なども求められる。活躍が期待される21歳について、野口さんはこう分析した。
「筋肉の付き方がしっかりしています。中距離選手はきつくなった時、下半身だけでなく上半身も使います。凄く速いペースで走るので、背筋や肩甲骨が硬い、またはヤワだと、あまり良い腕の振りもできません。ラストスパートなどにも大きく影響する。柔らかく、しっかりとした筋肉が上半身についてないといけない。田中選手はバランスが良いですね」
田中の母・千洋さんは北海道マラソンで2度の優勝を誇る市民ランナー。コーチを務める父・健智さんも元実業団選手だ。両親の影響で小学生の頃から自然と走り始め、中学から本格的に陸上を始めた。「小さい時から走っているから、そういう筋肉がついたのでしょう。実際に測らないとわかりませんが、骨密度も強そうな印象です。恵まれた体格、かつご両親の遺伝もあるのだと思います」。153センチの小さな体にポテンシャルを感じている。