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卵巣にできた腫瘍破裂、競技人生をかけた手術 現役選手たちへ「生理痛、仕方ないと諦めないで」――元陸上オリンピック選手・室伏由佳さん

陸上競技女子ハンマー投げアテネオリンピック日本代表であり、女子円盤投げ・ハンマー投げの元日本記録保持者でもある室伏由佳さん。中学生から陸上を始めて以降、35歳で引退するまでの間に、貧血、そして複数の婦人科系疾患を次々と発症。オリンピックや世界選手権に出場するなど、選手として活躍していた裏では、重い婦人科系の病に苦しむ日々を送っていました。「女性であれば一度は、自分の生理としっかり向き合ってほしい」という室伏さん。インタビューの後編では、競技人生をかけた手術の決断、そして病の重症化を防ぐために、選手や周囲の大人たちに伝えたいことについて、お話してくれました。

現役時代、室伏由佳さんはハンマー投げでアテネオリンピックに出場するなど活躍した【写真:Getty Images】
現役時代、室伏由佳さんはハンマー投げでアテネオリンピックに出場するなど活躍した【写真:Getty Images】

【インタビュー後編】アテネオリンピック出場・室伏由佳さんのメッセージ

 陸上競技女子ハンマー投げアテネオリンピック日本代表であり、女子円盤投げ・ハンマー投げの元日本記録保持者でもある室伏由佳さん。中学生から陸上を始めて以降、35歳で引退するまでの間に、貧血、そして複数の婦人科系疾患を次々と発症。オリンピックや世界選手権に出場するなど、選手として活躍していた裏では、重い婦人科系の病に苦しむ日々を送っていました。「女性であれば一度は、自分の生理としっかり向き合ってほしい」という室伏さん。インタビューの後編では、競技人生をかけた手術の決断、そして病の重症化を防ぐために、選手や周囲の大人たちに伝えたいことについて、お話してくれました。

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 ◇ ◇ ◇

――室伏さんは10代から貧血、20代半ばで子宮内膜ポリープや、PMS(Premenstrual Syndrome/月経前症候群)、機能性月経困難症(いわゆる生理痛)などの症状に苦しみ、痛みや不調と共存しながら競技を続けていました。さらに30代になると、子宮内膜症(チョコレート嚢胞)を発症します。

「はい。32歳を迎えてすぐのことです。激しい痛みが下腹部に走ったので、家族に付き添われ救急外来へ。検査の結果、子宮内膜症(チョコレート嚢胞/のうほう)と診断されました。卵巣にできた嚢胞(腫瘍)が気づかないうちにどんどん大きくなり、最終的に破裂してしまったんです」

――破裂……! それは相当な痛みだったのでは……。

「過去に経験したことのないほどの、かなりの痛みでした。本来は救急搬送するレベルだそうですが、『これぐらいのことで呼んではいけない!』と、痛みとパニックの中でも『大事にならないように』という意識が働いてしまいました。ポリープの問題が片付いたと思ったのに、それどころか、違うもっと深刻な病気になってしまった。自分の体は大丈夫であると、すごく過信していた、侮っていたなと思いました」

――それは検診などを怠ったという意味でしょうか?

「そうです。やっぱり悪さをするポリープが見つかったのであれば、本来、3か月~半年に1回は診察や内診をして予防に努めなければいけなかった。ところが、ポリープができたあとも、まさか子宮内膜症になるなんて、全く想像していなかったんですね。生理を繰り返していると起こりやすい病気で、8~10人に1人発症するといわれている現代病ですが、そんなことも知らず勉強不足でした。

 もしもポリープの切除後に、定期的に婦人科検診を受けたり、婦人科系の病気について自分で調べたり、学んだりしていれば、子宮内膜症を患うことを予防できたり、あるいは早期に発見できたかもしれません。腫瘍なんて、本当に2、3か月で大きくなり、破裂する恐れがあります。しかも、その人によって大きくなる速度は違いますから、当然医師にも明確に予測はできないのでやはり検診や検査そのものが予防になります」

――結局、チョコレート嚢胞も摘出手術を受けました。当時、同じ手術を受けた女性アスリートの症例は皆無に等しいというなか、よく決断されました。

「私の場合は当時、治療として服用していた低用量ピルが体に合わず、副作用による不調もあったので、手術をして、根治を目指すことが一番の選択だと考えたんですね。医師からは、長期間チョコレート嚢胞を保持していると、将来、癌になる恐れがある事実を聞きましたし、やがては取らないといけません。このままでいても人生にも、競技にも影響する。まずは治してもう1回、競技に取り組もうと決断できました。『健康を取り戻すために、手術をしたほうがいい』と、コーチである父や同じ競技者だった兄(室伏広治スポーツ庁長官)からも後押しされたことも大きかったです」

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