どうすれば女子スポーツ人口は増えるか WEリーグ初代チェア「部活にシーズン制導入を」
後の人生に生きるスポーツの価値「負ける経験ってすごく大切」
井本「全く同感です。そのためには、なぜ10代、20代の女子がスポーツをやりたがらないか、何が障害なのかもきちんと分析し、考えていくことも必要ですよね」
岡島「あとは家族にも女の子がスポーツをすることのメリットを伝えていきたい。私の話ですが、中学からサッカーというチームスポーツをやってきたことは、ビジネスにおいてもすごくメリットがあったと思っています。例えばプレゼンでうまくいかないと、そこで諦める人って結構いるんですよね。『自分にはできない』と。でもスポーツをやっていると、負けた経験が生きてくる。私たちは試合に負けるとなぜ負けたのかを考え、分析し、次に生かして勝とうとするわけです。ですから、負ける経験ってすごく大切」
井本「わかります。私はジュニアの頃は金メダルもたくさん獲りましたが、中学生以降、全日本レベルでは、万年2位の選手だったんですね。家には何百個もメダルがあるのに、ほとんどが銀メダル」
岡島「いや、それもすごいと思いますけれど(笑)」
井本「『シルバー・コレクター』が当たり前だったんですが、毎回毎回、負けるたびに『なにくそ』と自分を奮い立たせていました。その克己心は、今生きていると思います。絶対に、転んだままじゃない、また起き上がる」
岡島「スポーツをしてないと、子どもってなかなかそういう経験ができないと思うんですよね。ですから将来の生活や仕事をしたときに、スポーツの経験は生きるんだよと、伝えていきたい。そして、女子スポーツ界の発展のために、野球やソフトボール、バスケットボールなど、どんどん女子スポーツ界の横のつながりを作っていきたいと思います」
井本「本日はありがとうございました」
■岡島喜久子
東京都出身。中2で男子サッカー部に入部。その後、東京・渋谷区を拠点に活動する女子サッカーチーム、FCジンナン入り。1977年、中国で開催された国際大会「第2回AFC女子選手権」にFCジンナンの一員として参加。1979年の日本女子サッカー連盟設立時に初代理事メンバーに就任。1989年に海外転勤を機に選手を引退した。早大卒業後から長年、現JPモルガン・チェース銀行、米国のメリルリンチなど日米の金融業界に従事。2020年7月、WEリーグの初代チェアに就任した。
■井本直歩子
東京都出身。3歳から水泳を始める。近大附中2年時、1990年北京アジア大会に最年少で出場し、50m自由形で銅メダルを獲得。1994年広島アジア大会では同種目で優勝する。1996年、アトランタ五輪4×200mリレーで4位入賞。2000年シドニー五輪代表選考会で落選し、現役引退。スポーツライター、参議院議員の秘書を務めた後、国際協力機構(JICA)を経て、2007年から国連児童基金(ユニセフ)職員となる。JICAではシエラレオネ、ルワンダなどで平和構築支援に、ユニセフではスリランカ、ハイチ、フィリピン、マリ、ギリシャで教育支援に従事。2021年1月、ユニセフを休職して帰国。3月、東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームアドバイザーに就任。6月、社団法人「SDGs in Sports」を立ち上げ、アスリートやスポーツ関係者の勉強会を実施している。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)