なぜ体操選手の肩はあんなに丸い? ボディメイク的に「体操が最強のスポーツ」のワケ
「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。42限目のお題は「体操選手の丸い肩」について。
連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』42限目」
「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。42限目のお題は「体操選手の丸い肩」について。
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Q.体操選手の肩はどうしてあんなに丸いのですか? やっぱり、ボディビルダーみたいに超鍛えているのでしょうか?
丸い肩を形作るのは、肩をぐるりと覆う三角筋です。まず、肩を球体に仕上げるには、三角筋のフロント(前部)、サイド(側部)、リア(後部)をもれなく鍛えることが必要。体操競技では腕をあらゆる方向に動かし、よく使います。そのため、わざわざ肩を丸くするトレーニングをしなくても自然と全方向から三角筋が刺激され、丸い形になるのだと思われます。
特筆すべきは、メロンのような美しい球体に仕上がっている点です。肩の筋肉の重量だけをみたら、恐らく力士や格闘家の方がデカいでしょう。しかし、形は体操選手の方が圧倒的に美しいと私は感じます。その理由は、筋肉そのものの形が美しく、かつ、筋肉一つひとつが目視できるほど、体脂肪が完璧に落ちているためです。
これにはトレーニング用語でいう“ピークコントラクション”が肝だと考えられます。
ピークコントラクションとは筋肉が最大収縮を起こしている状態です。筋肉は最大収縮した時に強い刺激が入り、最大に膨隆します。この最大収縮の状態を意図的に繰り返すことで、効果的に筋肉の成長を促すトレーニング方法もあります(ピークコントラクション法)。ボディビルでは筋肉を丸く盛るための技術の一つですが、体操選手の場合、試技のなかでピークコントラクションを起こす瞬間が何度も見られます。
ボディビルでは、筋肉を丸く盛るために、ピークコントラクションと、フルのストレッチをかけながらトレーニングを行います。一方、体操の場合、美しく見せるためにしっかり伸ばして、しっかり縮めますが、結果としては、同じことをやっているんですね。このようにフルストレッチやピークコントラクションを起こすような競技はおそらく、体操とボディビル以外あまりないのではないでしょうか。
しかも、そもそもの可動域が狭いと、最大収縮を起こすのも難しい。体操選手は体が非常に柔らかいため、筋肉がよく縮み、よく伸びます。広い可動域を最大限に使ったピークコントラクションとフルストレッチですから、一般の人とは比べ物にならないぐらい強い刺激が入っていると考えられます。
また、見た目を整えるには動作をコントロールする技術も非常に大事です。狙った筋肉をしっかりと刺激するためのフォームを、徹底する必要があるためです。
我々ボディビルダーは筋肉の形を完璧に作るために、1レップ1レップ、狙った筋繊維に刺激が入るよう、非常に丁寧に動作をコントロールします。一方、体操選手は、試技を厳密に遂行したいから、一つひとつの動作で、指先、爪先まで筋肉を精密にコントロールする。それこそ一糸乱れぬ感じで、めちゃめちゃ美しいですよね。両者に共通するのは精密な動作。目的は別ですが、この点でも同じことをやっているのです。