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日本とサウジの番狂わせに見たW杯の魔力 会場を包んだ「やられ役」アジア勢の反骨心

連日熱戦が繰り広げられているサッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)も、開幕から1週間が経過した。中東初開催の祭典が見せるピッチ内外の様々な表情について、7大会連続で現地入りしている写真家でノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏が「THE ANSWER」にコラムを寄稿。今回はグループリーグ1巡目で日本とサウジアラビアが番狂わせを演じ、世界にアジア勢の躍進を印象付けた背景を考察する。

ドイツ戦が行われたハリーファ国際スタジアムは、試合が進むにつれて日本を後押しする熱気に包まれた【写真:宇都宮徹壱】
ドイツ戦が行われたハリーファ国際スタジアムは、試合が進むにつれて日本を後押しする熱気に包まれた【写真:宇都宮徹壱】

驚きの多いカタールW杯で際立つアジア勢の奮闘

 連日熱戦が繰り広げられているサッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)も、開幕から1週間が経過した。中東初開催の祭典が見せるピッチ内外の様々な表情について、7大会連続で現地入りしている写真家でノンフィクションライターの宇都宮徹壱氏が「THE ANSWER」にコラムを寄稿。今回はグループリーグ1巡目で日本とサウジアラビアが番狂わせを演じ、世界にアジア勢の躍進を印象付けた背景を考察する。

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 開幕前の静けさから一転、日本代表の劇的なドイツ戦勝利により、爆発的に注目度が上がったW杯カタール大会。現地で取材中の私は、日本の逆転劇のみならず、サウジアラビアがアルゼンチンを2-1で下した前日の試合も、記者席から観戦することができた。

 11月20日に開幕した今大会も約1週間が過ぎ、グループリーグは2巡目に突入した。半自動オフサイドテクノロジー、長すぎるアディショナルタイム、そしてスコアレスドローの多さ(16試合中4試合)など、出だしから何かと驚きが多いカタールでのW杯。そんななかでも最大のサプライズと言えば、やはりアルゼンチンとドイツが相次いで敗れたことだろう。

 本稿では、彼らを打ち負かした「アジア勢」を主語として、考察することにしたい。今大会、アジアから出場しているのは6か国。いつもの「4.5枠」にプレーオフを勝ち抜いたオーストラリア、そして開催国のカタールが加わったことで、過去最多の数のアジア勢が本大会に出場している。

 W杯におけるアジア勢は、いわばアウトサイダーの存在。あえて露骨な表現をするならば「やられ役」である。アルゼンチンもドイツも、初戦の相手がアジアと決まって「よっしゃ!」と思ったことだろう。それだけに、結果は極めて受け入れがたく、チームはもとより国民レベルでも「スキャンダル」となったのは間違いいない。

 ドイツVS日本も、アルゼンチンVSサウジアラビアも、似たような試合経過をたどった。前半に「格上」がPKで先制し、追加点を狙うもオフサイド。そして1点リードで迎えた後半、立て続けに「格下」から失点を食らって盛大なジャイアントキリングに終わるという流れである。

 もちろん、これらは偶然でしかない。が、W杯優勝経験のある強豪が、立て続けにアジア勢に敗れてしまったこと自体を「偶然」の一言で片付けてよいのだろうか? そこでグループリーグが一巡したこのタイミングで、カタール大会で連続して起こったアジア勢の躍進の要因として、3つの仮説を提示することにしたい。

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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