なぜ日本人に好記録が連発したのか 選手、陸連が感じた「必然」の高速レースの要因
好記録はシューズだけが理由じゃない、瀬古氏「今回の記録は選手の努力の結果」
ただ、シューズが改良されただけでは好結果は生まれない。河野ディレクターはこうも分析した。
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「それぞれの選手が(従来の日本記録より1秒速い)2時間5分49秒を頭に描いてトレーニングをやってきたなということ、大迫君以外の選手の練習に対する考え方がもう一歩進んだというのは事実だと思う。その結果がこれだけの好記録を生んだ要因だと思う。スピードを求めるという方向性が一定の効果が見られて、この流れは良かったなと思う」
明確な目標タイムがあり、それを目指して選手が切磋琢磨して努力する。日本のトップ選手たちが貪欲にタイムを狙う姿勢が好循環を生み、今回の好記録ラッシュを呼んだと考えている。「1時間2分で通過したハーフ、30人くらいいるという光景が、日本のマラソンの今後を面白くできるなと思うし、これからのペース設定は『それぐらいじゃないと始まらないよな』という当たり前のレベルが上がったことがうれしい」と頷いた。
実感しているのは選手も同じだ。日本人3位と健闘した上門は「ハーフまで相当な人数がいた。今日(記録を)出さないと相当置いていかれるとレース中に感じた。絶対ここで負けられないと思った」とレースの緊張感を表現。「(ゴールした)後でタイムを聞いて『おぉ……』と思った」とハイレベルな競争の効果に驚いた。
自己ベストが2時間11分34秒だった下田裕太(GMOインターネットG)は、記録を4分以上も更新する2時間7分27秒をマーク。レースについて興奮気味に語った。
「今回に関してはコンディションもいいし、陸上界も盛り上がってきているからどんどんタイムが出ていて。今回の東京はタイム出るだろうな、もしかしたら3人ぐらい(日本記録以上が)出てもおかしくないな、と思っていた。むしろ全員、仲間じゃないけど『みんなでタイム出そう!』みたいな雰囲気で僕はいました。みんなで協力し合いながらタイム狙いに行こうぜ、みたいな。こいつに勝つとかいうより、僕も助けながらタイムを狙っていくみたいな気持ちでいました」
厚底シューズの性能を認める瀬古リーダーも「選手だって努力しており、シューズにあったパフォーマンスをした。今回の記録は選手の努力の結果」と鍛錬あっての記録と強調した。選手の努力プラス、厚底シューズの性能。2020東京マラソンは、2つが合わさった必然の高速レースだった。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)