ハカV字応戦に込められたメッセージ 発案者エディーHCが証言「実はハカについて…」
ニュージーランド伝統のハカにV字陣形で応戦「観客にワクワク感を」
日本大会では、イングランドが話題をかっさらった瞬間があった。それは準決勝・ニュージーランド戦のキックオフ前、オールブラックスが誇るおなじみのハカにV字陣形で応じた場面だ。会場となった横浜国際総合競技場は大きなどよめきに包まれ、その直後から各種メディアやソーシャルネットワーク上ではV字陣形の話題で持ちきりに。イングランドの応戦に虚を突かれたのか、巧妙な攻守に翻弄されたニュージーランドは準々決勝までの圧倒的な強さは影を潜め、後半にやっと1トライ1ゴールで7点を挙げたのみ。イングランドが19-7のスコア以上に圧倒する試合展開で、決勝への切符を手に入れた。
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それでは王者ニュージーランドの調子を狂わせたV字陣形は、一体誰のアイディアだったのか――。試合後、イングランド代表の選手たちは口々に「ボス=エディー氏」の名前を挙げた。その真相をエディー氏に直撃すると、自身の発案であることを認めながらうれしそうに笑顔を広げた。
「実はハカについて、事前にリサーチをしたんです。すると、ハカは『ここは俺たちが守る場所だ。かかってこい』と相手に挑むメッセージの意味を持っていました。みんなハカを踊る時、大地を足でしっかり踏みしめるでしょう。つまり、この挑戦的なメッセージを受けた相手がチャレンジで応えることは、リスペクトを示すことになるわけです」
ニュージーランドに最大限の敬意を示しつつ、自分たちの結束力や強さを伝える形としてイングランドが選んだのがV字陣形だった。だが、エディー氏によると本来は半円を描く予定で、V字は“ミスの産物”だったという。
「私のアイディアでは、自陣の10メートルラインを越えないように半円を描いて、オールブラックスのチャレンジを受け止める予定でした。ルール上、10メートルを越えてはいけないことになっていますから。なのに2、3人の選手が越えてしまった(笑)。そんなミスもあって、半円ではなくV字になってしまいました」
形こそ、まさかのV字になってしまったが、あの場面で客席のボルテージが一気に上がったのは狙い通りだった。
「ハカによるチャレンジを受けたかったし、観客にもワクワク感を与えたかったんです。オールブラックスがハカを演じる時、対戦相手は立ったまま拍手を送るのが定番でした。でも、私はハカに応じることで、試合を見る人々に『この試合は何か違う展開になるから楽しみにしていてね』というメッセージも送りたかったんです。大成功? 楽しかったです(笑)」
エディー氏はイングランドに誇りを取り戻させたばかりか、後世に語り継がれるであろう名場面も演出した。世界を代表するHCとして、さらに評価を高めた日本大会は、エディー氏にとっても記憶に残る大会となったに違いない。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)