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働き方改革と部活指導は両立できるか 夏休み中に“公式活動”がない米国の運動部

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「米国の長期休暇中の運動部活動」。

アメリカの高校バスケ部の練習風景【写真:Getty images】
アメリカの高校バスケ部の練習風景【写真:Getty images】

連載「Sports From USA」―米国の長期休暇中の運動部活動について

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回のテーマは「米国の長期休暇中の運動部活動」。

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 時期外れは承知の上で、米国の長期休暇中の運動部活動についてレポートしようと思う。
 
 日本では教員の働き方改革に関連して「変形労働時間制」の導入を中心とする教職員給与特別措置法改正案が、衆議院の本会議で可決した。

「変形労働時間制」は、繁忙期の勤務時間の上限を引き上げるかわりに、夏休み期間中に休日をまとめ取りできるようにする。しかし、現実的には、見かけ上の超過時間が減るだけだろうと予想されているし、下手をすれば、年間を通じてさらに残業時間が増える恐れもあるだろう。改正案はこれから参議院で審議され、成立した場合には、2021年4月から導入が可能。ただし、導入するかどうかは各自治体の判断だ。

 この制度に反対するオンライン署名が集まっているが、それにもかかわらず、導入されたときには、夏休み期間中などに休日をまとめて取得できることが保証されなければいけない。また、オンライン署名を呼びかけている斉藤ひでみ氏は、この制度改革が「夏休み期間に十分休んでもらうため」という理由であるならば、変形労働時間制度を導入するのではなく、2週間ほどの長期閉庁期間を設ければ良いだけだ、と主張している。

 教員は夏休みに休むことができるのか。ひっかかるのは、運動部を含む部活動の存在だろう。日本では夏休みに甲子園での高校野球を含め、全国大会をはじめとする公式戦が行われる。まとまった練習時間も確保できることから、運動部活動が盛んになる季節だ。

 米国の中学校や高校では一般的に、夏休み中、運動部は「オフィシャル」な活動をしていない。米国の運動部活動はシーズン制。野球部など春種目の大会が夏休みの最初にかかることはあるし、秋種目のアメリカンフットボール部などの練習は夏休みの後半に始まるが、夏休みの真ん中あたりは、学校の運動部の公式戦は行われないことが多い。高校運動部を管轄する州の体育連盟によって、正式に活動を開始して良い日が定められているからだ。正式な練習開始日以前に、コーチが選手を招集して練習を義務付けることはできない。シーズン制であるがゆえに、練習開始日と公式戦最終日を設定しやすくなっている、とはいえるだろう。

(夏休みに公式戦がないのならば、いつ試合をしているのか。 通常授業の平日夕方から夜にかけての時間帯に照明をつけて試合をしている。もしくは、土曜日にやっている。米国の高校アメリカンフットボールを描いた「フライデー・ナイト・ライツ」という本や映画化のタイトルは、金曜日の夜に照明をつけて試合をすることからだ)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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