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ダルビッシュも認めた 25歳の元早実エース、「107日間の米挑戦」で決めた第二の人生

指導には最新のピッチング動作解析システム「ラプソード」を生かしている【写真:本人提供】
指導には最新のピッチング動作解析システム「ラプソード」を生かしている【写真:本人提供】

選手に区切りをつけ、定めた第二の人生「ピッチング指導の専門家になる」

 日本の球団のトライアウトを受ける話が舞い込み、9月15日に帰国した。受験後は10月17日のNPBドラフト会議を待ったが、指名はなし。これで選手に区切りがついた。少し早いと思える決断だったが、それを可能にしたのはもう一つの道を見つけたことだ。

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「ピッチング指導の専門家になるということ。ずっと心のどこかで思っていたものだったけど、8月に『P3』にいた頃から選手を“続ける、続けない”が微妙なところにあった。そんな時に選手としての欲と同じくらい(指導する)新しい活動に欲が出てきた」

 きっかけは、社会人を戦力外になった後に練習を続けた1年間にある。自身のトレーニングや体のケアを担当してくれていたのが、米国留学や指導経験を持つ人たちだった。先進的な施術や指導によって、復活の手応えを掴むことができた。「しっかりした理論で教えを受け、実践すれば良くなるんだと感じた」。だからこそ、自身の経験を広めたいという思いが沸々と芽生えていった。

「会社員で大企業に勤めていたら『1万分の1』の存在にしかなれないかもしれないけど、この分野なら『1分の1』に近い。だったら研究して極め、野球界に還元していくことが使命に感じている。やってみたいし、やらなきゃいけないと、この1年で思った」

 11月に「NEOLAB(ネオラボ)」という会社を立ち上げ、自身が代表に就任した。名乗っている「Pitching Strategist」は、米球界で近年増えている肩書き。日本語にすれば「投球戦略家」となる。内田の言葉を借りれば、従来は指導者が分かれていたトレーニング、テクニックの部分を一括して担当し、ピッチングをトータルでコーディネートしていくことを役割として掲げている。

 指導者としての強みはいくつかある。一つは「今でも150キロを投げられること」だ。「120キロの人に投げ方を教えられるより、150キロの人に150キロの投げ方を教わった方が説得力がある。体が動く限りは自分が投げて実践したい。だから、まだ球速は上げていく。そこは妥協したくない」。今なお日々のトレーニングを重ね、自らを実験台にして、ピッチングの進化を求め続ける。

 価値があるのは内田自身が一度、「球が遅くなった」という経験を味わいながら、トレーニングによって球速を戻していることだ。社会人時代にフォームを見失い、直球が130キロに届かなくなった。そんな状態からピッチングの構造を理解することで「150キロの直球」を再び、手にした。だから「自分の中には、トレーニングで球速を上げる確証があります」と胸を張って言える。

 もう一つの強みは「ラプソード」という最新鋭の投球動作解析システムを導入し、指導に生かせることだ。「従来は何キロという球速しか見えなかったけど、回転数に加え、回転軸も『ラプソード』なら見られるようになった」と言い、意義を強調する。

「リリースのポイントも数センチ単位で計測でき、定期的に測ることで調子のバロメーターになり、状態の波も減らせる。今まで投手と捕手の感覚で『ナイスボール』で終わっていたものを実際に数値化されて判断でき、その上で投球の質を改善できる。特に、投手は“平均値から外れているボール”が打たれないことが分かっている。ダルビッシュ投手ならスライダー、カーブがMLB平均値より大きく、変化量が多い。ドジャースのジャンセン投手のカットボールは高く浮いて曲がる。

 一方で、ブレーブスのカイケル投手はストレート系が直球なのに“負の方向”にいく。少ない回転数で沈むボールで抑えていたというデータが取れる。今までは『回転が汚い』という印象になったら、それを直そうとするのがセオリーだった。でも、結果として平均値に入ってしまい、打たれたかもしれない。計算して敢えて外して抑える投球スタイルを作り出せるし、投球軌跡、いわゆるピッチトンネルも確認できるので、より効率的なピッチングコーディネートができるんです」

 すでに少年野球のほか、社会人時代の同期などから依頼が舞い込み、ツイッター上でも指導を乞うプレーヤーが現れている。

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