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体操ニッポンに見た「伝承」の強さ 起源は“真似”にあり…8mmビデオから始まった「お家芸」

岡の優勝に一緒にガッツポーズする橋本大輝(左)【写真:ロイター】
岡の優勝に一緒にガッツポーズする橋本大輝(左)【写真:ロイター】

体操ニッポンの始まりは「真似」

 1960年のローマ大会で初めて団体総合で金メダルを獲得した日本男子体操は、そこから5連覇。80年モスクワ大会不参加で「伝承」が一度は途切れたが、2004年アテネ大会で28年ぶりの復活優勝を果たすと、その後は表彰台に立ち続けている。

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 小野喬、遠藤幸雄、加藤沢男、具志堅幸司、冨田洋之、内村航平と継承されたエースの称号は橋本につながれ、岡が後継者として名乗りをあげた。岡はパリ五輪代表を決めた6月、「橋本さんに勝てば、世界王者ですから」と話した。身近に世界があることが、競技のレベルを上げる。その繰り返しが、体操を強くした。

 中でも「十八番」が鉄棒だ。月面宙返りの塚原光男、10点満点の森末慎二らで種目別最多の金メダル7個を獲得。団体5連覇では、最終種目の鉄棒で金メダルを決めるのが定番だった。今大会だけでなく、04年アテネ大会の「栄光の架け橋」も、16年リオデジャネイロ大会も日本が最も得意とする鉄棒で逆転しての金メダルだった。

 基本は「真似」だ。戦後、52年ヘルシンキ大会に初出場した日本体操陣は、世界との差を痛感したという。8ミリビデオに撮った海外の演技を、ひたすら真似た。「小野に鉄棒」と言われた小野は「日本人は真似が得意。そして、さらに上を目指す工夫も得意だった」と話す。

 世界の頂点に立ってからは、先輩の演技を真似た。そこに工夫をこらして進化させた。その繰り返しこそが「伝承」になる。萱和磨が団体の時に鼓舞し続けた「あきらめるな」も伝統。最後に得意の鉄棒があるから選手は逆転を信じて演技できる。それも強さだ。

「お家芸」を継承していくために、今大会は最高の結果といえる。岡はもちろん、橋本も次のロサンゼルス大会を目指す。「さらに日本は強くなる」と橋本は話したが、それも十分可能。2人の五輪個人総合王者が後進に引き継ぐ時間も長くとれる。中国などライバルは強いが、しばらく「体操ニッポン」が輝き続けそうだ。

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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