自らハンドル握り遠征へ、練習場も転々…2軍新球団オイシックス監督が受け入れる“格差”
ドラフト指名へ乗り越えなければならない壁「あらゆるスピードが違う」
「野手で言えば、あらゆるスピードがNPBの選手とは違うんです。ファームといえど。投球もそうですね。NPBの選手は簡単に150キロを出す。打球の速さや守備のチャージもそうですし、動きのキレやスピード感も違う。オイシックスの選手たちはまだ、そこに戸惑っている印象ですね」
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この違いは、NPBを目指す選手たちにとってみれば、乗り越えなけければならない“壁”を意味する。侍ジャパンやプロの1軍から独立リーグまで、あらゆるレベルの選手を見てきた指揮官は、ドラフトにかかるための必須条件をこう考えている。
「1個でいいんです。特筆すべき武器がないと、ドラフトにはかからない。足が速い、肩が強い、スイングが速いといったように特徴めいたものが必要なんです。これといったものがあると、NPB側も評価しやすい。平均より上の突き抜けたものがないと」
橋上監督が指導してきた選手でそれが見えたのが、昨秋のドラフトで新潟アルビレックスBC(当時)からヤクルト入りした伊藤琉偉内野手だった。東農大を中退して、昨季途中に新潟入りしてきたが、その才能は突出していた。あっという間にリーグに順応。ドラフト5位指名を受けNPBへ羽ばたいていった。
「スピードや守備力、パッと見ただけでこれはモノが違うなという感じでした。ここの選手はNPBに行くために、持って生まれたものに磨きをかけていくのですが、プロで軸になるような選手は違うんです。最初から違うものを持っている。練習してうまくなるようじゃ、高い給料はもらえないのも事実なんです」
自分の武器に気付き、突き詰めた選手だけが秋のドラフトで名前を呼ばれる。橋上監督はじめ首脳陣は、そのための手助けは惜しまない。そしてファンを集め、チームを経済的に成り立たせるためには勝利という結果も無視できない。二兎を追うような状況には指揮官も「確かに、難しいかもしれませんね」と口にする。
「勝ち負けで互角に戦えれば一番いいですけど、元NPBの人間からすれば、そんなに簡単なものではないのはわかっています。ちょっと歯応えがあるなというものが一つでも二つでもあれば、そこからで良いと思うんです。ファンの皆さんにも面白いと思ってもらえるでしょうし」。自分の長所をスカウトにアピールできる選手が出てくれば、ファンを集めることにもつながるはず。そんな好循環を目指し、前例のない挑戦が始まった。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)