プロ入りか大学進学か 元Jリーガー澤登正朗の境界線、進路に悩むユース選手に伝える言葉とは
サッカー・Jリーグに1993年の創設時から参戦している清水エスパルスで、唯一無二の存在としてサポーターに長年愛されてきたのが元日本代表MF澤登正朗だ。開幕前年にチームに加入、Jリーグ初代新人王を獲得。エースナンバーの10番を背負い、不動の司令塔として清水一筋を貫いて「ミスターエスパルス」と称された。そんなクラブの象徴的存在が、2022年に清水ユース監督として帰還。下部組織の選手を指導する中で感じることやJクラブユースだからこその強み、そして未来のあるべき姿についての想いを明かす。
澤登正朗監督が語る「Jクラブユースの在り方」第2回、ユース選手への進路指導
サッカー・Jリーグに1993年の創設時から参戦している清水エスパルスで、唯一無二の存在としてサポーターに長年愛されてきたのが元日本代表MF澤登正朗だ。開幕前年にチームに加入、Jリーグ初代新人王を獲得。エースナンバーの10番を背負い、不動の司令塔として清水一筋を貫いて「ミスターエスパルス」と称された。そんなクラブの象徴的存在が、2022年に清水ユース監督として帰還。下部組織の選手を指導する中で感じることやJクラブユースだからこその強み、そして未来のあるべき姿についての想いを明かす。
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インタビュー第2回のテーマはユース選手の進路指導について。プロ入りを果たす選手がいる一方、大半の選手は高校を卒業後にさまざまな道へと進むが、Jリーグの厳しい環境を知る澤登氏だからこそ、悩む選手には大学進学を勧めるという。その真意とは――。(取材・文=佐藤 俊)
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澤登正朗は清水エスパルスのユース監督になって、2年目を迎えた。
以前は常葉大学浜松キャンパス(現・常葉大学)サッカー部で9年間、監督として指導していたが、ユースの高校生年代を指導するにあたって難しさを感じたのは、彼らが思った以上にまだ「子供」であるということだった。
「大学生は成人していますし、将来のこと、トレーニングのこと、学業のことなどいろんなことを考えて生活しているので、自立している子が多いんです。でも高校生はサッカーで言うと、自分が、自分がという考えが強く、チームのためにという考えができない子が多い。自分から率先してチームを導いたり、発言することがなかなかできないですね。そこを引き出してあげるのが僕ら指導者の役割の1つになっているのですが、こういうのは自らできるようにならないと上のレベルに行った時、本人が困るんです」
中には、1年ごとに成長する選手もいるが、まだ少数派だ。指導する際も、澤登は「気を遣う」という。体罰はもちろん厳禁で、モラハラ、パワハラにも気をつけている。
「今の子たちは敏感で、ガツンと言うと何も言わなくなる。でも、やっぱり怒る時は怒らないとダメなんです。チームのやり方をピッチで表現しない選手には、『それじゃダメだ』とハッキリ言います。決まり事をしっかり守ったうえで、良さを発揮する。これはサッカーだけではなく、社会の中で生きていくためにも必要なことです。僕はユース年代の選手は、技術などサッカー面を伸ばすのが一番の目的ですが、人間的な成長を最も重視しています。それが伸びていけば、サッカーも自然と上手くなっていく。自己が確立し、自分に自信が持てれば、練習の態度や試合でのプレーも変わってきます」
澤登は、2時間の練習時間に選手と真摯に対峙するだけではなく、その選手の理解を深めようと、月1回程度、学校へ行き、先生に学校での態度や生活ぶりについて話を聞いている。成績表も見る。赤点があると補習授業に出ないといけないため、練習ができなくなるからだ。
「赤点が30点だとするじゃないですか。35点にするためには何をすればいいのか、僕は『先生に聞いてごらん』と言います。必ずヒントをくれますからね。それもコミュニケーションだと思うんですよ。面倒くさいではなく、コミュニケーションをしっかり取って、必要なことを学んでいく姿勢がないとプロになっても成長しないんです」